第1話 リア充マニュアル
新しい世界へ1歩を踏み出してからはや1年。
もうすっかり馴染んだローファーや制服、そして目の前に広がる通学路。
ただ1点違う点を上げるのであれば、シワひとつない制服に身を包み、期待や不安など様々な表情をした見慣れない生徒が歩みを進めているところだろうか。
そう、俺が通っている彬洞(りんどう)高校にも春が来たのだ。
「カオル〜! いくら可愛い新入生がいても、このご時世見てるだけでも痴漢だセクハラだって言われるぞ〜」
新入生から声のする方に目線を移すとそこには、黒髪センターパートに着崩した制服がいかにもチャラ男陽キャであることを誇示しているかのような男、矢幡 亮(やばた りょう)がこちらに近づいていた。
「本当に生きづらい世の中になったもんだよ…… まぁ、俺は年上の落ち着いたお姉さん一択だがな」
小言には小言を、ちょけにはちょけを。
同じテンションで会話をすることにより一種のミラーリング効果のようなものが発生すると、この1年で学んだ。
「あっという間に2年生になったもんなあ。長いようであっという間だな」
ぽつりとこぼした亮の言葉に俺は「それなぁ」と返す。
実際、勉強や部活以外にもリア充への成長と定着に尽力していた為、毎日が新鮮で目まぐるしい1年だった。
それからも入試休みでの出来事や同級生のニュースなど、談笑を続けながら進んでいるとあっという間に校門前まで到着していた。
「そういや亮とはもう違うクラスだな」
「カオルと体育祭で戦えるのアチいよな!」
「どれだけ先の話をしてるんだよw っていうか戦闘民族すぎだろw」
昨年とは違う扉から生徒玄関をくぐり、それぞれの下駄箱を探す。
一緒のグループでつるんでた友人が違うクラスになったことは寂しいが選択科目がそれぞれ文理で違うから仕方の無い事だし、別に違うクラスだからといって関係が終わる訳では無いのでわざわざ口には出さない。
何より「寂しくなる」なんて言ったらいじられ倒されるしな。
内履きに履き替え、亮とそれぞれ隣の教室までを共に目指すのだった。
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