がんばるんば
藤意太
がんばるんば
sad life good life but life の頭文字を取ってSLGLBL 中学生の時にやっていたブログのタイトルだ。痛々しいったらありゃしない。だが、当時は本気だった。本気でセンスあると思っていた。
書いていた内容はポエムだ。
人生は辛い。でも、歩く。それが楽しいから。
小さい僕が鳴き声を上げても誰も聞いてくれない。でも、この足元の石ころだけが黙ってそばにいてくれている、といった具合だ。痛くて陳腐でおもしろくない。
そんな思春期の鼻水みたいなポエムを夜な夜な書いていた鼻くそ中学生も、今では大人になり、それなりの社会経験を積み、三十代を迎えた。新卒のころから勤めた会社では役職も与えられた。だが、父親の仕事を継ぐことになり、退職することとなった。
会社は送別会を開いてくれた。酒を浴びるほど飲んだ帰り道、僕は電車の方面が一緒の後輩の田中良平(仮名)と一緒に帰っていた。彼も同じくらい飲んでいて、車内で会話している時の彼の呂律は回っていなかった。しばらくして、彼が降りる駅に到着した。良平は降りる直前、僕に向かって、
「あれっすよ、先輩。がんばるんばですよ。がんばるんば。人生がんばるんば」
良平は何度も大きく頷きながら言って、電車を降りた。
僕が降りる駅は後、3駅だった。かなりの睡魔に襲われていたので、眠らぬように必死で目を開けている時に、ふと思い出しました。
そう言えば、「がんばるんば」って昔、ブログでよく言ってたな。
僕が中学時代に書いていたポエムブログ、SLGLBL。そこでのポエムの最後、僕はよく、人生いろいろあるけど、がんばるんば。と書いていた。
痛々しいポエムに致命傷を食らわせる一文だが、当時の僕はおそらく、重たくなった文章を軽く、ポップに明るくする効果があると信じていたのだろう。
あいつの前で、「がんばるんば」なんて言ったことあったかな。アルコールでぶよぶよになった脳みそを回転させてみるが、言った記憶がない。
嫌な偶然だなと思った。
僕は寝落ちすることなく、降りる駅へついた。改札を通り、自宅へ向かう途中、夜風に吹かれていると、もう一つ、思い出したことがあった。
僕の当時書いていたブログには読者がいた。中学の友達にはブログを書いていることは知らせていなかったので、僕も知らない読者だ。数は多くないが、たまにコメントをくれていた。
わかります。
そうですよね。
悲しくても前を向くしかないそれが人生。
僕の心の声に共感してくれている人がこの世にいる。それが嬉しくてたまらなかった。
その中でも定期的にコメントをくれる人がいた。
その人のハンドルネームが、りょう君だった。
たぶん、偶然だろう。そう思った。
がんばるんば 藤意太 @dashimakidaikon551
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