番外編 if story ~瞳さん~


 ~if story~


 もし良介が、雫たちと出会わなかったら。





     ♦ ♦ ♦





 日曜日。


 昼ご飯を食べ終えた俺は、ソファに座って何でもない映画を見ていた。

 白いカーテンが揺れ、窓から差し込む光は瑞々しい。


「ふふ、ふふふふっ♡」


 俺の膝に頭を置き、寝転がってなんだか楽しそうな瞳さん。


「どうした? そんなに笑って」


「別に~?」


 相変わらず瞳さんの考えていることは読めない。

 けど、ここ数年ずっと一緒にいて、少しずつわかったこともある。


「りょうちゃん?」


 瞳さんの柔らかい頬に手を置く。

 

「どうしたの?」


 きょとんと目を丸くさせる瞳さんに、俺は言うのだった。


「別に?」


「……ぷっ、なにそれ~」










 ――十年前。


 俺は高校を卒業して、日本最難関の大学に首席で合格した。

 その大学は実家から通える距離にあり、特に一人暮らしはせず。


 そもそもこずえの店の手伝いを辞めるわけにもいかず、家から通える一番偏差値の高い大学がその大学で、入学を決めた。


 入学の手続きも済ませ、春休みはこずえの店をとにかく手伝った。

 高校三年間でこれと言った友達は出来ず、卒業旅行とかそういうイベントはなかったし。


 そして迎えた――3月31日の夜。

 間もなく時刻は12時を回り、晴れて俺が高校生から大学生になる。


 とはいえ、別に俺はそこに特別思うところはなかったのだが……ある人は違った。


「……ん? 瞳さん?」


 12時を回ってすぐ、瞳さんが俺の部屋に入ってくる。

 相変わらず瞳さんは俺の家を自由に出入りしていた。


「どうした?」


 訊ねるも、瞳さんは答えない。

 

 ショートパンツにブラ紐が見えるくらい露出したタンクトップ。

 相変わらず無防備な格好で、瞳さんが俺のベッドに入ってきた。


「ひ、瞳さん?」


 困惑していると、瞳さんがようやく口を開く。


「りょうちゃん……」


 艶っぽく呟くと、瞳さんが――強引に俺にキスしてきた。


「っ⁉」


 初めての感覚に脳が揺れる。

 一度距離を取ろうとしたその時。

 瞳さんは俺の頭をがっしりと掴み、ホールドしてきた。


 さらに瞳さんが舌をねじ込んでくる。


「瞳さ……」


「んうぅっ……」


 ……それから何分経っただろうか。

 ようやく瞳さんから解放され、二人とも息を切らす。


 瞳さんの頬は紅潮していて、妙に色っぽかった。


「急に何⁉」


「……ずっと待ってたから」


「え?」


 瞳さんがその目を揺らしながら言う。


「もうりょうちゃんは高校生じゃない。もう大学生さんだよねぇ?」


「たった今なったばっかりだけど……」


 すると瞳さんはニヤリと笑い、俺の首に手を回しながら言った。



「なら、もういいよね~?」



「っ!!!」


 瞳さんが自分の体ごと俺をベッドに押し倒す。

 そしてぺろっと自分の唇を舐めると、言うのだった。




「おめでとう。そして――ありがとう。りょうちゃんっ♡」





 その後、俺は半ば強引に瞳さんに初めてを奪われた。










 それから、俺と瞳さんは付き合い始めた。


 だって体を重ねてしまったから。

 もう俺には瞳さんを幸せにする責任があった。


 それを全うするため、大学卒業後は超一流企業に就職。

 24歳で瞳さんと籍を入れ、晴れて夫婦になった。


 そして――現在に至る。


「りょうちゃ~んっ♡」


 瞳さんが俺のお腹に顔を埋めながら言う。

 相変わらず瞳さんは俺にベタベタくっついてくる。

 もちろん、嫌じゃないが。


「ねぇ……りょうちゃん」


 瞳さんが俺の目をじっと見てくる。

 その目が何を俺に訴えかけているのか、言葉にしなくてもわかった。


「瞳さん、昨日も散々したでしょ? それに今朝だって、起きてすぐに瞳さんが……」


「してもしても足りないんだもん! せっかくの休日だしさぁ~? 夫婦の愛を確かめて、もっと確かにするのは大切じゃない~?」


「それはそうだけど……」


「というかりょうちゃんも、ちょっと期待してるくせに~?」


「うっ……」


 瞳さんは子供みたいに笑うと、体を起こして俺に抱き着いてくる。

 瞳さんの幸せまで共有され、二倍で幸せを感じる。


「りょ~ちゃんっ♡」


「まったく……瞳さんは」


 本当に困った人だ。

 それにいつまで経っても、瞳さんの行動パターンはわからない。


 けど、一つだけ間違いないことがある。

 それは――






「愛してるよ、りょうちゃん」







 瞳さんが俺を、誰よりも愛してくれているということだ。


「俺もだよ、瞳さん」


 今度は俺から、瞳さんに口づけする。

 するとふにゃりと顔を綻ばせ、嬉しそうに目を細めるのだった。



 おしまい。



――――あとがき――――


if story でした!

瞳さんファンの皆さん! これが俺たちにとってのtrue endだぜ!


ここでお知らせです!

新連載がスタートしました!


タイトルは、


「無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目される」


です!


この作品を見てくれている皆さんならきっと好きな作品かと思いますので、ぜひご覧ください! 


作品のリンクはこちらまで→(https://kakuyomu.jp/works/16818622172603350753/episodes/16818622172605126733


また、新作短編、


「めちゃくちゃ“アレ”が強い女子高校生が“死ぬほど”好きだ!」


も投稿しましたので、ぜひご覧ください!


作品のリンクはこちらまで→(https://kakuyomu.jp/works/16818622172297847561/episodes/16818622172300540427






 

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裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました 本町かまくら @mutukiiiti14

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