第42話 強くなる
そっから俺たちは、飯を食い終わった後もいろんな店に行った。
楽器屋では黒川が試奏用のギターで軽くライブを始めたり、ジャンクショップでは零唐の熱いトークにみんなの頭にクエスチョンマークが浮かんだり、色々とおかしいこともあったがなんやかんやで楽しかった。
「そろそろ帰るか?」
誰かがそう言ったころには、空は赤く色づいており今にもその空は黒く染まりだしそうだった。
「そうだな。そろそろ帰るか」
そうして俺たちは寮に戻ることになった。
「それにしても、楽しかったな」
帰る途中に、不和色さんが言った。
「だな。みんなでまとまってどこか行くって修学旅行以来じゃね?」
「あー、確かにクラス全体って考えるとそうかもね」
「これに、壮馬がいればな…」
矢部の一言でさっきまで騒がしかったみんなが急に静かになった。
「だな、次行くときは30人で行きたいな」
「そうだな。あいつが好きそうな本も置いてあったし」
「ていうか何冊か買っちゃった」
そういいながら街遊さんが手に持っている紙袋を上にあげた。
「なんであんなに本買ってるんだと思ったらそういうことか…」
「とはいっても大半は自分用だけどね」
そんなことを話していると、寮についた。空はすっかりと黒く染まっていて、スマホの時計を見ると20時を過ぎていた。
「そんじゃ、また明日な」
「じゃあね」
「バイバイ」
「おやすみ」
そういってみんなはそれぞれの部屋に戻っていった。俺も、その中の一人だ。
ガチャッ
自分の部屋のドアを開けると、そこにはもうすっかりと見慣れた空間が広がっていた。
俺は、荷物をそこらへんに置きそのままベットに倒れこんだ。
今日は久しぶりに楽しい毎日だったな。このゲームが始まってから心の底から1日中楽しめる日なんてなかったし。でも、やっぱり冠木がいないと完全体って感じがしない。
俺含め全員、合計人数をいう時は冠木を入れてしまう。みんなも同じ気持ちなのだろう。
冠木とはこの世界ではあったことがないし、そもそもいるかどうかすらわからない。でも、冠木ならなんやかんなで一回ぐらい俺たちに顔を見せに来そうな気がする。
そうなってくると一番の心配は冠木父だな。俺はあまり冠木父について詳しくは知らないが、俺たちの命をもてあそぶような奴だ。冠木も何か悪い目にあってるかもしれない。
「うわクッソ心配…」
俺はベッドの上でそう叫んだ。
早く冠木が戻ってきて、また30人で笑顔でいられて、そして、あいつらが現世に戻れる。そういう結末を俺は望んでる。
そのためには何が必要か?強さが必要だ。強くなって早くこのゲームをクリアする。
「よし、行くか」
俺は、ベットから飛び起き、部屋を出た。より、強くなるために。
元・3-Dの命懸け初見プレイ あつかち @atukati0808
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