幼馴染と学校で一番モテるイケメンが両思いかもしれない

黒星★チーコ

全(?)1話

 

 ◆◇沢木太陽さわきたいよう視点◇◆



 前から気になっていたあのが、あいつと一緒にいた。

 なんであいつらが!?!?


 放課後、友達とコンビニで買い食いしながら駅前をブラブラしていた俺は、雑踏のなかでひときわ目立つその二人連れを見て驚いた。危うく食いかけのフライドチキンを落とすところだったぜ。


 二人のうちひとりは浅井四葉あさいよつば。幼稚園から小中まで一緒だった俺の幼馴染。

 高校では腐れ縁が切れて別のところになったんだが(まあ俺が男子校に行ったから当然なんだけど)、ここ最近急に色気付いたというか、女っぽくなって何があったのかと思ってた。


 その横にいるのが城田琉歌しろたるか。主に目立ってるのはこっちのせい。四葉のスカートと同じチェック柄をあしらった制服のパンツを履いてるんだが、足が……くそっ、俺より確実に長い。スタイルが良いからキマりすぎてて、ホントに四葉とお揃いの制服なのか若干疑問になるレベル。

 更に顔もかなり整ってる。髪もパーマなのか? なんかふわっとしてるんだが、俺がやったら面白くなるであろうその髪型も、城田は顔がいいから似合ってるんだなこれが。


「え、うそ、あの人かっこよくない?」

「あ、ヤバっ。モデルのルナ君に似てるかも」


 俺の近くにいた女の子達が城田を指さしてそう言っている。行き交う人の中にはわざわざ振り返って城田を見るやつも何人かいるくらいだ。

 二人連れなのにどっちかって言うと主役とモブって感じで、女の子達からは四葉は見えない扱いされてる気がする。多分城田と同じカフェでバイトしている俺が、同じエプロンで横に並んだ時も俺がモブになってるんだろうなぁ。あいつお客さんにもすげえモテてるみたいだし。


 ……でもなんで? なんであの二人が一緒にいるんだ!? だって二人が同じ高校なのは知ってたけど、こないだ城田は四葉の事を知りもしなかったのに!


 疑問だらけの俺の頭に、二人の笑顔が飛び込んできた。四葉がスマホを城田に見せ、城田はスマホを覗き込むために身体を寄せる。四葉が真っ赤になり……そして画面を見た城田は弾けるように笑い、二人は目を合わせた。

 それを見た俺に、ざわざわと悪寒が走る。凄く嫌な予感がする。いや、まさか。違うよな。きっと違う筈。でも……。


「ゴメン、俺用事思い出したわ! また明日!」

「え、あっ、おお」

「お疲れ、太陽」


 気がつけば俺は友人達に別れを告げ、チキンを握りしめたまま四葉と城田の方向へ向かって走り始めていた。


「おい、四葉!」

「えっ、太陽!?」

「沢木君!?」


 声をかけると二人はギクリと身をこわばらせ、寄せ合っていた身体を離す。


「どういうことだよ。お前ら知り合いじゃなかっただろ!」

「え、えっ、琉歌様の事は知ってるに決まってるじゃん! だって学校イチモテるイケメンだって言ったでしょ!」

「いや、こないだお前が俺のバイト先に冷やかしで来た時は、城田はお前の事を知らないって言ってたぞ?」

「あ、あれから仲良くなったんだよー?」

「ほう、お前が学校イチモテる奴と? どうやって?」


 俺が四葉に詰め寄ると、明らかに目を泳がせた。


「きょ、共通の話題で……」


 その瞬間。俺を笑い者にしてるんだな、とピンときて、カッとなった。でも一番ムカついたのはその事じゃない。


「大体なんだよ!……」



 ◆◇城田琉歌視点◇◆



 放課後、浅井さんと一緒に帰っていた時。

 沢木君の話をしていたら、丁度その本人が現れてビックリした。


 呆然としている間に、沢木君はこっちを無視して浅井さんに質問をしていく。いつもバイト先でも元気で声が大きいけど、今も大声なのでどうしても周りの注目を集めてしまう。


「えっ、なになに修羅場?」

「ああ~、あのイケメンが相手なら女の子が乗り換えちゃうのもわかるわ~」


 そんなひそひそ話が聞こえてきて、物凄く肩身が狭くなった。

 兄貴はホントにこういう修羅場を作った事がある(家の前だったから三人まとめて母さんに怒られてた)けど、まさか自分がそんな風に誤解される日がくるとは。うう、居心地が悪い。帰ろうかな。


「沢木君、あの……」


 興奮している彼の背中に声をかけようとした時、沢木君が大声で叫んだ。


「大体なんだよ! 学校イチモテるって!! 城田は女の子なんだから、それを言うなら美人だろ!!」

「!!」



 ◆◇浅井四葉視点◇◆



 やたらと声がでかくて、元気なだけが取り柄の幼馴染、太陽。

 あ、風邪をひかない所も取り柄と言えなくもないけど、風邪をひかない奴ってバ……っていうよね?


 そんな太陽のどこが良いのかさっぱり理解できない。そして今、当の本人が琉歌様と一緒に居た私を大声で責め立ててくる。でもさ、大人気の彼女を独り占めできるなんて凄い事なんだよ? これくらいの役得はいいじゃん! と思ってたんだけど、なんか怒ってる?


 ……まさか。今スマホで太陽がちっちゃい頃の写真(鼻垂らしてて笑えるやつ)を見せてたのを気づかれた? でも琉歌様がキラキラした顔で「見たい」って言ってたのを太陽に言うわけにはいかないし、困ったなぁ。


 私がごにょごにょ誤魔化してたのも良くなかったのか、太陽は更にヒートアップする。


「城田は女の子なんだから、それを言うなら美人だろ!!」

「!!」


 一瞬の間。その後に太陽の背中側から琉歌様の小さな声が聞こえた。


「えっ……」

「あっ!!」


 太陽はすごい勢いで振り返った。でも後ろから見てもわかる。耳やうなじまで真っ赤だ。


「あああ、し、城田。今のは違くて……いや、美人なのは違わないんだけど!!」

「あっ、えっ……」


 琉歌様も太陽に負けないくらい真っ赤になってて……うわなにこれ。

 なにこれ! か わ い い !!

 学校イチモテて、いつもクールに微笑んでる「女子校の王子様」な琉歌様が、完全に乙女の顔しちゃってるじゃん!! かんわいい!!

 あああこのご尊顔をこっそり撮って残したいけど盗撮になるよねぇ。はー、目に焼き付けなきゃ。


「えっと、あの……フライドチキン喰う?」


 きゅんきゅんしてたのに太陽のセリフでずっこけそうになった。


「なんで! しかも食いかけじゃん!! 琉歌様はそんなもの食べないわよ!!」

「……たっ、食べる」

「えええ」

「じゃあやるっ」


 食いかけのチキンを差し出す太陽に、真っ赤な琉歌様がそっと手を出して受け取った。


「えーと、じゃあ城田、またバイトでな!!」


 そういうと太陽は走り出す。何がしたかったのアイツ。ホントにバカだよね。琉歌様もなんであんなのがいいのか……と思ってその琉歌様を見たら、チキンをぎゅっと握りしめて呟いた。


「初めて男の人に美人って言われた……」


 ぎゃあああああ!! か わ い い !! 尊 い !! 破壊力ヤベぇぇぇぇぇ!!

 これは明日、絶対に琉歌様ファンの女子(皆キラキラしてる)に報告しなきゃ!! 共有しなきゃ!!


 はああ、まさか私のバカな幼馴染と学校で一番モテるイケメンが両思いかもしれないなんて、とんでもない展開になるとは!



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続く……?

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