第17話

新菜:ねえ。

新菜:どうして?

新菜:私何かしちゃったかな。

新菜:ごめんね。

新菜:ごめんなさい。

新菜:何でもする。悪いところは直すから。マサの理想になるから。

新菜:マサ。

新菜:好きだよ。

新菜:好きなの。

新菜:お願い。

新菜:別れるなんて嘘だよね? 意地悪しただけだよね?

新菜:ひどいよ。

新菜:ごめんなさい。

新菜:マサの練習の邪魔したから? 怒っちゃった?

新菜:しつこかったかな。

新菜:寂しかったの。それだけだったの。

新菜:お返事ください。

新菜:マサ、助けて。

新菜:マサがいなきゃ、生きていけないよ。

新菜:別れたくない。

新菜:何で返事くれないの?

新菜:忙しい?

新菜:明日は土曜だよ。午前か午後だけでも会えないかな。

新菜:それとも部活?

新菜:マサに会いたい。

新菜:話があるの。

新菜:あのね。

新菜:実は、ね……。

新菜:子供が、できたの。



「……はぁぁぁ?」


 風呂上がり、怒濤の通知をおざなりに眺めていた昌明は、新着の通知に素っ頓狂な声を上げた。濡れた髪をタオルで乱暴に拭きながら溜め息をつく。

 だめだ。もうついていけない。勝手だという自覚はあるけれど。

 ワイフォンの画面をタップ。連絡先を呼び出す。

 そして、彼女の連絡先を削除した。


「ったく……」


 ふいにゾクリと寒気がした。

 ――胸くそ悪いメッセージを見たせいか。それとも、無駄に眺めていたせいで湯冷めしてしまったか。

 苛々としながら、ふと外へ目を向ける。

 窓に映った自分の顔に、ぎょっとした。

 怒りにつり上がった目。裂けんとばかりの禍々しい口。そこから鋭い牙が覗く。頭には異質の象徴とばかりに尖ったツノが――。

 何度も瞬く。窓ガラスには何もない。ただいつもの自分が映っているだけだ。


「――……気のせい、か」


 疲れているのかもしれない。

 うんざりとそう結論付け、昌明はベッドへ潜り込んだ。


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