食人鬼は食べれない

夢時間

第1話 食人鬼と少女

僕は食人鬼だ。

それは、種族のせいなのであって、なりたくてなったわけではない。

だが、もちろん、食人鬼の血を引いている訳もあって、食人衝動がかなりきつい。

「うううぅぅぅぅ………」

僕は、なぜか食人鬼の血が濃いみたいで、金色のもふもふな尻尾と耳がある。

僕自身はあんまり好きじゃないけど。

食人衝動は人による。

きつい人もいれば、全然そうでもない人もいる。

その、きつい例が、この、自分の近くにいる少女だ。

「?具合でも悪いの?」

少女の名はルーア。

白髪に、燃えるようなヴァーミリオンの瞳。

自分がかなり背が高いのもあって、自分とくらべると、かなり小柄な体。

彼女は、どうやら、伝説の『忘れられた一族』の血を引いているらしく、僕の先祖が、その一族にやられたせいで、かなり食人衝動がきつい。

(食べたい……じゃなくて、えーと、別のことを考えなきゃ…)

「ねぇねぇ、大丈夫?かおいろ、悪いよ?」

「うっ!!」

カノジョがこっちを向かせようと、体を引っ張ったせいで、少女と目が合う。

すると、突然に食人衝動がわいてきた。

(んぁぁ……食べちゃいけない……大丈夫、僕なら大丈夫。)

この子は、ぱっと見、6歳ほど。

相談なんてできる訳ない!

……あんまり嫌われたくないし。

(…?僕今なんで嫌われたくないなんて…)

「もしかしてルーアのこと嫌い?」

「えっ?!!いいいや、そんなことないよ…ハハ」

「いまお兄ちゃんの方をずっと見てたら嫌いって単語が聞こえてきてたよ」

伝説の一族の中の、何人かは人や動物の心が読めるらしい。

(ルーアさんもそうなのかな。……でも。)

「ルーアさん、あまり、その力は使わないでもらえるかい?」

「なんで?」

「その力を使ったら、誰か悲しむ人もいるかもしれない。苦しいこともあるかもしれない。……ルーアさんにはそんな思いはしてほしくないんです。」

「……わかった!ルーア、使わない!」

えらいこだね と軽く言い、彼女の頭を少し撫でる。

さわやかな風が、僕の金色に薄い空色の髪を揺らす。

その風が、初めて、すごく気持ちいいと感じた。

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