第3話 食人鬼と本気

僕は、ユウジとルーアが一生懸命、鍛錬たんれんしているのを、木の上からみていた。

少し口からため息がもれてしまった瞬間。

「サツキ兄さん、どうかしたんですか?」

黒髪碧眼くろかみへきがんの綺麗な髪をした少年が、僕の肩をたたいた。

「うわあああっっっっ?!?!?!?!」

「え、どうかしました?」

「いや、突然後ろから肩叩かれたらびっくりするでしょうが…」

「え、そんなもんですかね。まあ、なんでもいいですけど。」

指でちょいちょい、と後ろを指していたから、何だろう、と思った瞬間。

「グオオオオオオォォォォ………………」

「なっ…あれはドラゴンじゃないか!」

即座にルーアの方を見ると、あっちからは見えないらしく、平和に鍛錬を続けていた。

「実は、サツキ兄さんに手伝って欲しくて。ルーアちゃんには危険なので。あと僕アーチャーなんで。」

「……分かった。手伝うよ。その代わり、ここにいてもらえる?」

「?」

「…多分危ない。」

「あ、はい。じゃ、ここにいますね。」

タンッと軽快な音を立てて、地面に着地する。

僕は、だんだんとドラゴンに近づいていく。

それも、もちろん素手で。

僕は、軽く深呼吸して、ゆっくりドラゴンの真正面に立つと。

「ごめん、ちょっと失礼するね」


喰 『喰殺イート


喰う、喰う、喰う。

僕は1秒もたたない間に、骨も喰い終わっていた。

食人衝動が薄くなっていくのを感じ、爽やかな気持ちになる。

「かっけぇ……」

「うわ、やっぱり美味しくない……。人間は食べてないっぽいかな」

「サツキ兄さん、今、めっちゃかっこよかったですよ!でもやっぱりサツキ兄さんって…」

「あぁ、人間を食べるといわれている食人鬼イーターさ。ルーアさんには秘密にしてるけど。」

「そうなんですね…。ま、いいんじゃないんですか?」

「え?」

「僕は仲良くなるのに種族なんか関係ない。今楽しかったらそれでいいと思いますよ。」

その言葉に、僕の胸は何だか熱くなっている気がした。

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食人鬼は食べれない 夢時間 @nekokurage0

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