第25話 偽りの仮面**
物語がクライマックスに近づく中、真実が明らかに 夜の闇が深まり、冷たい風が静寂を切り裂くように吹き抜ける。結城と藤堂は北村と小西を取調室で追及し終えた後、黙々と事務室に戻ってきた。二人は北村たちの動機を聞き出したものの、まだ何かが引っかかる感覚にとらわれていた。
「藤堂、お前も感じてるか?」結城が静かに問いかける。
「ああ、北村たちの話には筋が通らない部分がある。特に遠宮に関してだ」と藤堂は腕を組みながら答える。
遠宮が標的にされた理由は、北村の姪がいじめに遭っていたときに何もしなかったからだと言われていた。しかし、結城たちの直感は、これが単なる表面の理由であるに過ぎないと告げていた。
「遠宮という男、何かが変だ…」結城は机の上に積まれた遠宮の資料を見つめる。その顔には緊張が走っていた。
藤堂はその資料に目を落としながら、「遠宮の過去、何か見落としているんじゃないか」とつぶやいた。
二人は再度、遠宮の履歴書を読み返し始めた。遠宮の経歴は一見普通に見えるが、妙に空白の期間が多いことが気になった。結城はそれを確認するため、何かを思い出したように引き出しから過去の未解決事件のファイルを取り出した。
「まさか…」結城はページをめくり、目を見開いた。「藤堂、見てみろ。この事件だ。天城という名前を聞いたことがあるか?」
藤堂は首をかしげながらファイルを見たが、次第に表情が険しくなっていった。「これが…天城の仕業だったのか?」
天城はかつてのシリアルキラーで、狡猾にして冷酷な犯行を繰り返していた男だ。その残虐な手口は警察の間でも悪名高かったが、数年前に忽然と姿を消していた。藤堂はその名を思い出し、震える声で結城に尋ねた。「まさか、遠宮が天城だと言うのか?」
結城は深くうなずいた。「遠宮の履歴書にある空白の期間、それが天城の犯行期間と一致している。奴は身を隠すために名前を変え、別の人生を歩んできたんだ」
二人はこの驚愕の事実を前に、一瞬の沈黙を共有した。その後、結城が決意を固めるように立ち上がった。「今すぐ遠宮を確保しなければならない。彼が天城であるなら、再び何かを企んでいるかもしれない」
その夜、結城と藤堂は遠宮の住む場所へと急行した。車の中、結城は冷静さを保とうと努めながらも、心の中では緊張が高まっていた。
「天城はどこまで計算して動いているのか…」藤堂が不安げにつぶやいた。
「わからない。だが、ここで止めなければ、また犠牲者が出るかもしれない」結城は歯を食いしばり、ハンドルを握り締めた。
遠宮のアパートに到着した二人は、無言のまま階段を駆け上がり、彼の部屋の前に立った。結城は深呼吸をし、ドアをノックする。
中からは何の反応もない。結城は再びドアを叩くが、やはり静寂が続くだけだった。
「これは…まずいな」藤堂が緊張を滲ませた声で言った。
「ドアを破るぞ」結城が短く命じると、二人は力を合わせてドアを蹴破った。
中に踏み込むと、部屋は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。家具は整然としていたが、どこか冷たい雰囲気が漂っていた。
「遠宮!いや、天城!出てこい!」藤堂が声を張り上げた。
その瞬間、部屋の奥から何かが動く音が聞こえた。二人が構えを取ると、暗がりの中から一人の男がゆっくりと姿を現した。その顔には、冷酷な笑みが浮かんでいた。
「ようやく見つけたか、結城。だが、遅すぎたようだな…」天城、いや遠宮は低い声で言い放った。
彼の手には、鋭いナイフが握られており、その刃は月明かりに照らされて光っていた。
結城と藤堂は再び身構え、互いに目を合わせた。「ここで終わらせるぞ、藤堂」
「ああ、やるしかない」藤堂が力強く応じた。
次の瞬間、天城が凶器を振り上げ、襲いかかってきた。結城と藤堂はその動きを見切り、全力で応戦する。部屋の中で、静かな夜が再び激しい戦いの舞台となった。
ESCAPE② 岸和田連続殺人事件 鷹山トシキ @1982
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます