第24話 復讐の残影

 夜の静寂を破るように、北村と小西はひそやかに林と遠宮を狙って動き出した。遠宮は莉子がイジメで苦しんでたとき対処をしてくれなかった。佐藤裕子は莉子をイジメていた。莉子は北村の姪だった。裕子を殺ったのは北村だった。中村たちも遠宮さえいなければ死ななかった。林は北村の同級生で鳩尾を殴ったりイジメていた。

 小西は五風荘の管理に携わっていた。三吉は小西にとって邪魔な存在だった。

 栗原は北村にパワハラをしていた。

 二人は暗がりに紛れ、細心の注意を払いながら目標に近づいていく。林と遠宮はまだその危機に気づいていない。北村が手にしたナイフが月明かりにかすかに輝き、冷酷な決意を反映しているように見えた。


「今日で終わりだ…」北村は小西に囁いた。


 しかし、その瞬間、影から不意に結城と藤堂が現れた。結城は鋭い目つきで北村を見据え、藤堂はすでに戦闘の構えを取っていた。


「ここまでだ、北村、小西。お前たちの思い通りにはさせない」結城が冷静に告げる。


 北村は驚きつつも、その顔には苦笑が浮かんだ。「お前らか…だが、俺たちを止められると思うな」


 小西も拳を握りしめ、結城と藤堂に向き直った。緊張感が一気に高まり、辺りの空気が張り詰める。静かな夜に、心臓の鼓動だけが響き渡る。


「やるしかないか…」藤堂がつぶやいた。


 次の瞬間、四人の間で激しい戦いが始まった。結城は北村の鋭い攻撃を素早くかわし、反撃の一撃を繰り出す。藤堂は小西の動きを見切り、冷静に対処していく。拳と拳が交錯し、ナイフの刃が空を切り裂く音が響く。


 戦いは次第に激しさを増し、北村と小西の顔には焦りが滲み始めた。結城と藤堂の実力は予想以上であり、彼らの計画は徐々に崩れ去っていく。


「このままでは…」小西がつぶやくが、もう遅い。結城の鋭い一撃が北村の腕を捉え、ナイフが地面に落ちた。藤堂も素早く小西を制圧し、戦いは終わりを告げた。


「もう終わりだ。これ以上の抵抗は無意味だ」結城が静かに告げた。


 北村と小西は敗北を認め、無言のまま立ち尽くした。彼らの計画は完全に阻止された。林と遠宮は命を狙われていた事実を知らぬまま、今も無事でいられるのは、結城と藤堂の尽力のおかげだ。


「行こう」結城が言い、藤堂と共にその場を後にした。彼らの背中には、二人の強い覚悟がにじみ出ていた。

取調室の空気は重苦しいものだった。北村と小西は対面する警察官の視線を避け、静かに座っていた。二人の前には結城と藤堂が立っており、厳しい表情で彼らを見下ろしていた。


結城がゆっくりと口を開いた。「なぜ林と遠宮を狙ったのか、理由を聞かせてもらおうか。」


北村は目を伏せたまま、一瞬の沈黙の後、重い口を開いた。「…俺たちの計画は、始まりから失敗する運命にあったのかもしれない。だが、やるしかなかったんだ。」


「やるしかなかった?」藤堂が鋭く問い返す。「それが理由か?お前たちの行動が許される理由になるとは思えないが。」


北村は微かに苦笑した。「許される理由なんて、最初からないさ。ただ…俺たちには復讐しか残されてなかった。林も遠宮も、かつて俺たちの仲間だった。だが、あいつらは俺たちを裏切ったんだ。」


小西が口を挟んだ。「林と遠宮は、俺たちが苦境に立たされた時、助けるどころか、見捨てて自分たちだけ逃げた。それがどれだけ俺たちを追い詰めたか…お前たちには分からないだろう」


結城は黙って二人の言葉を聞いていたが、その眼差しには厳しさが増していた。「それで復讐を選んだのか?裏切られたと感じたからと言って、人の命を奪う理由にはならない」


 北村は悔しげに顔を上げ、結城に向かって叫んだ。「なら、俺たちはどうすればよかったんだ!裏切りの代償を払わせなければ、俺たちが生きてきた意味なんて、何もない!」


その叫びに、取調室の空気がさらに重くなる。藤堂が一歩前に出て、冷静な声で言った。「復讐は何も解決しない。お前たちの心の傷も、結局は何一つ癒されないままだ。それが分かっていないのか?」


 小西は一瞬言葉を失い、沈黙が続いた。やがて、ぽつりと呟くように言った。「…分かっていたさ。それでも、あいつらを許すことなんてできなかった」


 結城は深く息をつき、二人を見据えた。「お前たちは、自分たちの行動が何を意味するかを理解しているんだな。その上で、罪を償う覚悟はあるのか?」


 北村と小西は視線を交わし、やがて北村が頷いた。「…覚悟はできている」


 藤堂が静かに手錠を取り出し、二人の前に差し出した。「なら、これからは法律に従って、自分たちの行いに責任を取れ」


 二人は無言のまま手錠を受け入れた。結城と藤堂はその様子を見守りながら、厳粛な表情を保っていた。


取調室のドアが開き、二人はゆっくりと連行されていった。その背中は、かつての怒りや憎しみによって燃え上がっていたものの、今はどこか空虚で、寂しささえ漂っていた。


結城と藤堂は彼らが去った後も、しばらくの間、無言でその場に立ち尽くしていた。彼らの心の中には、復讐という名の空しさが深く刻まれていた。

 

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