冬の日、コーヒー片手に起こった怖くない話

ろくまる

冬の日、コーヒー片手に起こった不思議な話

 怖そうで怖くない話、という事で。

 人生の中で未だに不思議だな〜と思う話です。


 私が高校卒業して一年くらいの頃だったと思います。母とふたり、夕食後にデザート代わりにコーヒーを飲んでいた時です。

 ふいに母の友人の奥さんのAさん(母も私も苦手な相手ではありますが、雰囲気は天真爛漫に振る舞うお嬢様、といった感じの人です)からこんなメッセージが母のスマホに届いたのです。


『今、ウチにお姉ちゃんがいる気がする』


 ……お姉さんはその当時、数年前に亡くなってる方です。母は会った事あるけど私は会った事のない方なので、その時に「そんな人がいたんだ」と思った程度でした。

 なのに、ふと頭の中に映像が浮かびました。


「お母さん、その人って髪染めてなくて、肩にちょっと髪がかかるくらいの長さの、Aさんよりは細身の人? ちょっとAさんに似てない雰囲気っていうか」


 と。私は問いかけていました。

 すると母は少し怖い顔で、問いました。


「……顔見えてる?」

「ううん、見えてない。多分見えちゃまずいと思うから見ないようにしてる。でもなんか……Aさんのお家にPCある? そこにそんな女の人が座ってるような姿が見える」


 昔から霊が不意に見えると言いますか、お盆にひいおばあちゃんが祖母の後ろにいるのが見えたりする事があったので、たまたまそちらに知識のある方に見てもらった時「そういう力があるお家なんですね」って言われているので、見えた時の注意点を教えてもらったくらいでした。

 ただこういう、遠くの物が見えるような状況の対処を知らないのでほぼ直感で見ないようにしていました。何となく、死んだ人の顔を見るのは悪い気がしただけですが。


「お姉さんはモノクロに見えてる。でも何か悪いとか嫌な感じはしないなぁ……とりあえずPCに不調無いかな?」


 私の言葉に聞いてみる、と母がメッセージを送ると、すぐにこんなのが返っていました。


『うん、ここ数日電波悪いみたいで動作不良起こってたの。ネット環境も問題ないのに変だねって旦那とも話してて』


 やはり、と思いました。別に何かある訳じゃないけど、なんだかそうなっている気がしていたからです。

 でもそのお姉さんの特徴が何故分かるのか、本当ならそこにいる理由も、何も分かりません。

 ただ、Aさんにもしお姉さんがいるならどうするか聞くと「お姉ちゃん、帰りな?」とは思っているそうでした。

 なので、なんとなく、私はまだ残ってるコーヒーをひと口飲んで念じてみる事にしました。


『お姉さん、そこにいるとAさん心配しちゃうそうなので、お墓に帰りませんか?』


 すると、私も心配なんだけどな、という雰囲気を感じたのでぽつりと、


「なんとなくだけど、お姉さん心配してるみたい。Aさん最近怪我でもした?」

「私は知らないから、聞いてみる」


 母がぽちぽちメッセージを送っていると不意にお姉さんが、期待しているような雰囲気を出してる気がしたので、私が出来るのは伝えるだけですよ、と念じて返しました。伝わってくれると信じながら。

 すると、母は驚いた声をあげていました。


『この前、階段から落ちた』


 Aさんは大きな怪我は無かったものの、かすり傷程度の怪我をしていました。

 これは母も知らなかったし私ももちろん知らない事です。


(……本気で亡くなったお姉さんがAさんのところにいるし私が何故かそれを見ているみたい)


 これはもう、お姉さんが多分伝えたい事を伝えたら帰ってくれる気がしました。

 私はPCのところでお姉さんに「私は大丈夫」と伝えてあげたら帰ると思う、もし気になるならその後で塩でも巻くとかした方がいいんじゃないか、と母にAさんへ伝えてもらいました。

 しばらく、コーヒーではなく水を飲んでAさんの連絡を待つ事にしました。疲れたし私がやれる事はやった、もう頼られたくない、と思ったからです。


 すると、お姉さんがふつりと見えて。

 窓から帰ったような気がしました。


 結局、何故こんな事が起こったのかも分からないまま、帰ったような気がするという事だけ母に伝えました。

 そのあとすぐAさんはPCを起動したそうで、不調なんて無かったかのように動いた、というオチがついたのでした。


 写真も何も見た事はない相手の特徴を当てた時のゾッとした感覚は怖かった気がします。

 こんなホラーでも何でもない話ですが、公式様の企画に花を添えられたら幸いです。

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