殺人現場に幽霊がいない…とは限らない。

これは秀逸なドキュメンタリーである。
近隣に住む『訳ありの母子』…しかも
母親は老婆ともいえる年齢、準じて娘も
もう決して若くはない。終始、罵声の
聞こえる家の前には、異様な人集りと
赤色灯が。

 遂に、事件が起きてしまったのか?

仁王立ちする娘の異様さ。作者含む町内の
有志が恐る恐る室内を確認する。その、
息を呑ませる描写…。特に、風呂場の中。
水の張られた湯船、絡みつく黒髪。
 そして、消える灯り…。

飄々とした語りで読まされる、この異様な
顛末とは……。
作者はコメディに定評があるが、兎に角
読ませるのがとても上手いのだ。


【怪談】とは、往々にしてこういうもので
あるのかも知れない。