第4話 恋のペーパードライバー

大学生になり、田舎の学生はまず何を求めるか。

そう、自動車の免許証である。


東京や大阪みたいな都会と違って、俺が住む鹿児島では車がないと生きていけない。

極端な話、生きていけるかもしれないけど生活範囲がマジで狭くなると思う。

地下鉄は無いし、電車も1時間に2回くれば上々。

市電なんて中心街にしかないから、少しでも県庁所在地を離れたらマジで足しか移動手段が無かった。


そんな環境だから、せっかくの大学生活で遊びつくすためにも、車は必須項目なのである。

しかも、免許証を持っているか持っていないかで、わずかながら格差が生まれてくる。


「え、お前持ってないの?w」


まだ免許取り立ての奴からも、そんなマウントをとられてしまう世界だ。

だから俺も、取れる年齢になったらすぐ自動車講習に通いだす。

ちょうどその頃、同じサークルに好きな子がいたんだけど、その子が夏休みを間近に控えた時期に、こんなことを言いだした。


「宮崎の阿曽ファームランドに行きたいね」


しかも、可愛い宿泊施設もあるから泊まりたい、と言ってきた。


これって、そういうことでしょ?

これに関しては、俺の早とちりじゃないよね??


俺は何としてでも免許を獲得するため、期末試験の勉強にアルバイトの過酷な環境の中、講習所に通い詰めた。

ただただ頑張った。

それだけで良かったんだ。


だからこそ、今でもふと思い返してしまう。

どうして俺は、『あんなこと』を言ってしまったのだろうって…。


努力の甲斐あって、俺は免許を手に入れた。

期末試験も合格、アルバイトもやりきった。

あとは、お泊りに良ければ全部が思い通りだった。


でも!!

当時の俺は!!

純情が過ぎたんだ!!


そもそも女の子とお泊りなんて、そんな不純なことをしても良いのだろうか。

そんなことを、ふと考えてしまったのである。

一度考えだすと、思考がどんどん泥のぬかるみにはまっていった。

何日も悩んだ結果、俺はとある結論に辿り着いてしまう。


「そうだ、遊びに行く前に告白して、恋人になろう!」


昔の俺よ。

その心意気は、漢だよ。

でも、バカだったよ。


明日から夏休み。

蝉の声が耳に刺さるような、忘れられない初夏。

俺は女の子を呼び出し、思いの丈を素直に伝えたんだ。


え?

女の子は何て言ってたか、だって?


すんごい困っていたよ。


「ごめん…そういうんじゃ、ないんだよね…」


俺の予想では、キーパーのいないPKくらいの感覚だった。

だって遠方へ行って、泊まりたいって言ってたんだよ?

希望を抱くじゃん!


結局、お泊りはもちろん中止。

夏休みに、俺は運転をする機会に恵まれず、アルバイトへの道のりが楽になったくらいだった。


これを読んでいる君。

タイムマシンを作ってくれ。

当時の自分に会いに行って、拳で教育してやりたいよ。


大学生になって、たった4回しか来ない夏の1つを消費した若き日の俺。

こんなことを繰り返していた俺は、心身ともに疲弊していた。

すると、ちょっとした優しさが愛おしく感じてくるものである。


そう、こんな俺にもいたんだよ。

悩みを聞いてくれる、親身な別の女の子が。


ここから逆転して、輝かしいキャンパスライフを送るのかと思った人もいるだろう。

でも、俺の人生で、この子との話を超える地獄はまだ訪れていない。

次の話では、この地獄の蓋を開けていくとするか。


みんなも何か、失敗談や面白い話があったらコメントください。

俺のネタが無くなる前に…!


ではでは、今日もこの辺で。

ばいばい。

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100話後に幸せになれる20歳の瀬戸際男(実話) 2R @ryoma2

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