モキュメンタリー

関係者インタビュー：「噴水」

　…ここの噴水を含め、四か所だと聞いているよ。

　実験ドキュメンタリーだそうでね。

　美大の四人の学生さんが。

　一人につき、一か所ずつカメラを持って。

　公園に集（つど）う人たちを撮りたいと。

　特に噴水周りを中心に。

　一定時間、撮りたいと申請が来てね。

　――まあ、映像もこうして残っているから。

　他の三か所でも、許可は取れたんじゃない？

　…うん、結論から言うとさ。

　コレは撮れちゃいけないよね、って話で。

　見た目は、普通に見えるよ。

　爺（じい）さん、婆（ばあ）さんに、自転車で通る若者。

　撮った時間帯のこともあるし。

　よくまあ、こんなに…と言うか。

　――深夜二時からの一時間ほどの出来事でね。

　…それで、まあ。

　観（み）た時に違和感があってね。

　ここに映った爺さんが俺の親戚で。

　少し引っかかるものがあって、調べてみて。

　…うん、市のお悔（く）やみ欄（らん）を引っかき回して。

　そうしたら、全員が故人だったという話で。

　まあ、他の撮影先にも問い合わせたけどね。

　漏れなく、同じ結論が出たわけで。

　…作り物にしては、あまりにリアルだし。

　まあ、そう言う目的だったんだろうなと。

　翌朝には、カメラだけを残して。

　学生さんたちは全員行方知れずで。　

　――ただ、理由は何となくわかるけれど。

　だって、あの動画さ。

　最後に撮影してた学生さんが出て終わるし。

　散々、故人ばかりを映していたのにも関わらず。

　最期に彼ら自身が映るんだから。

　その意味を考えたら。

　…やっぱりというか、ねぇ？