関係者インタビュー:「値」(※音声記録)

 …あー、もしもし。聞こえているかい?


 驚くのも無理はないが、冷静に聞いてくれ。

 

 ――あの連中。

 そう、お前が依頼された行方不明の大学生。


 アイツらがな。

 パラメーターをいじったせいでなった。


 何のパラメーターかって?

 そりゃあ、この宇宙のだよ。


 …知ってるだろ?

 この前、読んだ本に書いてあっただろうが。


 宇宙は一定の条件によって成り立っている。

 その均衡きんこうが少しでも崩れれば、存在できない。


 連中が、そのパラメーターをいじったんだ。

 方法を知ったうえで記録映像を撮っていた。


 …すでに見たはずだ。


 連中が作った動画。

 そこに不自然な数字が紛れていたことに。


 妙に、回りくどい道を歩いて。

 明らかに死んだ人間と接触して。


 …全部、パラメーターをズラした結果だ。

 時間も空間も操作したからこそ、出来たんだ。


 ――だが、それは大きな間違いだった。


 空間は性質上。

 ほころびができれば、閉じようとする。


 均衡バランスが崩れれば。

 他のところで補正ほせいをし始める。


 それが巡りめぐれば、全体がゆがむのは道理さ。


 …分かるはずだ。

 この時点で、もうダメなんだよ。


 連中を追うこと自体じたいがムダなんだ。

 物理的な距離ごとゆがみきっている。


 もし、一歩でも近づけば…こうだ。


 ――今、目の前にあるのは俺の死体だろ?


 その手にあったメモの数字を押して。

 これを聞いてる。


 録音かと思うが…悲しいかな。

 コレは生電話だ。


 すでに時間がズレてるんだよ。


 …一応、安心できる要素を言っておこう。


 その遺体は、まもなく消える。

 自分とそっくりさんの死体は片付けなくて良い。


 …だから、すでに崩れているんだ。


 遺体が何処どこに行くかも分からないし。

 宇宙に放り出される可能性だってある。


 …ただ、もし。

 一つ忠告するとすれば、だ。


 連中をこれ以上、詮索せんさくするな。


 でないと、いつか。

 俺が、俺で無くなる。


 近づけば、近づくほど。

 全てがオカシクなっていく。


 …もう、無理かも知れないがね。


 何しろ、こうなる前には。

 俺も、俺の死体を見ているんだから。

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