関係者インタビュー:「斜陽」

 …綺麗きれいな夕日ですよね。


 父は、気象予報士でして。

 こうして動画として配信されると感慨かんがい深くて。

 

 生い立ちから、学んだ大学。

 勤めていた局から、今日こんにちまで。


 ドキュメンタリーとして。

 学生さんも父と一緒に各所をめぐって。


 こんなに楽しげに笑う、父の姿は初めてで。


 家では、ずっとムスッとしていて。

 仕事の話も一切しなくて。


 ――でも、ここでは。

 夕日の落ちる河川敷を学生さんと歩いていて。


 …日が、いつまでも沈まないんですよね。


 父が亡くなった日から配信されて。

 かれこれ三年近くも、このままで。


 どこの河川敷かも分からない。

 夕日がいつまで経っても沈まない。


 そんな中で笑顔をまじえながら。

 雲の形や空模様を話していて。


 …最初は、うらやましかったんですけどね。

 こうも続くと薄気味悪くて。


 だって、空は何一つ変わっていませんし。

 学生さんも未だに見つかっていない。


 今の状況に…

 彼らは、気づいているんでしょうか?

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