関係者インタビュー:「空き家」

 …そうなの。元は兄夫婦の家でね。

 住んでいた子供も上京して、今は空き家なの。


 でも家って、放っておけばダメになるでしょ?

 だから、私が鍵を預かって掃除をしているの。


 …そうそう。

 撮影に、この家を使いたいって言われてね。


 若い子たちでね、学生さんだったわ。


 なんでも自主制作で。

 空き家問題を絡めた話を撮りたいって。


 当時のリアルな生活も再現したいという話でね。


 夏休みの固め撮りという約束で。

 スペアの鍵を渡したの。


 …それが、八月のことでね。

 もう、三ヶ月も経っているのよ?


 渡した鍵はスペアだし。

 何か悪さをされたらと思ったけれど。


 今のところ様子を見ても。

 何もおかしなことはないし。


 …ああ、そうそう。


 あの子たち。

 ネットに動画を上げるって言っていたわね。


 今は、もう見れるの?

 生配信ということは、今も撮っているのね?


 …すごいわねえ、別の家で撮っているのかしら?


 間取りも、台所のすりガラスの模様も。

 この家と同じだもの。


 …本当に、これは別の家で撮っているのかしら?

 

 どう見ても、この子たち。

 あの家にいるようにしか見えないのだけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る