モキュメンタリー
化野生姜
…
関係者インタビュー:「呪いの動画」
…ああ、『呪いの動画』ってやつね。
あれね、嘘だから。
見れば死ぬって噂だけど。
今まで死んだ人はいないから。
あれ、撮ったのウチの美大生だし。
卒業制作で十年以上前に研究室の連中が集まって作ったものだから。
ネット投稿でね。
今で言う、モキュメンタリーってやつ?
…うん。さも本当にあった事件を調査しているって感じでね。
場所もチープで。
大学近くの河川敷の雑木林なんだよ。
確かに広大だよ。
何しろ国内最大の一級河川だそうだから。
死体の一つや二つぐらい埋めても。
バレないほどの林も広がってるし。
だからだろうね。
そこで、埋められた遺体を探すって内容で。
ドキュメンタリー方式で制作されたの。
動画は分割して時間も十分程度。
投稿サイトに深夜にアップされて。
今もなかなかの人気らしいよ。
…うん、そう。
今も投稿されているんだよ。
動画のチャンネル、今でも健在だから。
連中、とっくに卒業しててもおかしくないのに、まだやってるんだよ。
動画の背景見てるとわかるけど。
夕暮れ時に撮ってるだろ?
こっちもその時間帯に河川敷をみるとさ。
数人ほどの影が動いているわけ。
…会って話したことはあるかって?
無いよ、だって連中は【影】だけだもの。
近づくことだって、校内では禁止されているし。
あー、そうなんだよ。
どうもタブーっぽくてさ。
前、捜索願いが出された時に警官が近づいたらしいんだけど、それきり。
あれ以来。
五人だった影が、七人に増えちゃったからね。
いや、警官の時には六人だったから。
もう一人どっかで増えたんでしょ。
…まあ、ともかくさ。
あの動画、今のところ見た人間は問題ないから。
夕暮れ時に遺体を探して林の中を歩くだけ。
後ろから付けてくる足音にも。
今の話でなんとなく理由は分かるでしょ?
結局、呪いなんか無いんだよ。
――連中が。
未だ帰ってこないというだけの話なんだからさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます