第5話 星歌先輩の破滅デート1
チー牛少女、星歌先輩のデートプランは本人の意気込み溢れる宣言に反して、ごくごく平凡以下だった。
初手は、よくあるアニメ映画を一緒に見るというもの。
なぜかその映画は女性向けの、恰好いい美少年がたくさん登場するようなアイドルものがチョイスされており、ただ自分の趣味を好きな人に押し付けようとしているだけの、星歌先輩の愚かしい性格が滲み出ている選択だなと思った。
「絶対面白いっすよ~この映画は。オタクたちの集まるレビューサイトでも高評価でしたし!」
「……はぁ」
美少年アイドルに興味がない俺としては、もう映画を寝て過ごそうかなとも思っていたが、ここは星歌先輩をより俺に夢中にさせるための布石だと思い、我慢して2時間耐えた。
美少年アイドル達の友情と、その中で起こる危機、そこからの逆転が描かれた内容は、なんとか見れるレベルではあったが、肝心の美少年アイドルに魅力を感じない俺の感性では、満足いく体験だったとは言い難かった。
「どうだった? めっちゃ良かったっすよね!? もうわたしなんて泣いちゃいましたもん!」
テンションが上がり続ける星歌先輩が本格的にうざくなってきた俺は、もうこのあたりで本性を出していく事にしようと思った。
「……先輩。俺は正直言って、めちゃめちゃ退屈でしたよ?」
「……え?」
「男心が分かってなさすぎる映画のチョイスです。これで男を楽しませられると本気で思ってるなら、先輩にはがっかりしました」
これは賭けではあった。
場合によっては、この先輩の俺への強い好意が、怒りとなって反転する可能性もあっただろう。
だが、実のところ俺は確信していた。
このチー牛女に俺の魅力に抗って怒りを見せるような事態が起こるわけないと。
実際――
「ご、ご、ごめんっす、アオカゼたん。わたし、アオカゼたんに嫌われたら生きていけないんすよ~。もう何でもお詫びするから、許して欲しいっす」
星歌先輩は、見事に自分に対して下手に出た。
これが魅力的な異性の持つ、一種のパワー、権力のようなものが有効に働いた結果である事は明らかだった。
その事に俺は気持ちよさを感じつつも、このチャンスを最大に活かすべく、こんな提案をする。
「そうですねー、じゃあ、こんなゲームをしましょう? 今から二人で一緒に買い物に行って、星歌先輩に俺は3つおねだりをします。もし1つ買ってくれたら、機嫌を直して星歌先輩と腕を組んで歩いてあげます。2つ買ってくれたら、ほっぺにキスしてあげます。3つ買ってくれたら――一緒にホテルで休憩してぇ、
「……っ!」
俺の露骨な誘惑に、動揺してごくりとつばを飲み込む音が星歌先輩から聞こえてきた。
「いいですよね? 面白そうなゲームだと思いませんか?」
俺はぐぐっと星歌先輩に顔を近づけて、美少年フェイスの接近で顔を赤らめドキドキする先輩を見つめながら至近距離で小首をかしげてみせる。
「はぁ……はぁ……アオカゼたん恰好良すぎ……こんな格好いいアオカゼたんと、ホテルで休憩できる……凄い事、してくれちゃう……そんなの……そんなの……」
動揺し過ぎて考えが口から漏れている星歌先輩を、本当に弱い女だな、と思いながら、俺は平気な顔できょとんと星歌先輩を見つめ続ける。
「お、面白いゲームだとわたしも思います! ぜひやってみましょう!」
案の定、星歌先輩はその誘惑に負けた。
勝てるはずがないのだ。
異性と縁のない、むしろ異性に嫌われてばかりだっただろうチー牛女である星歌先輩が、この絶世の美少年、佐野碧風に誘惑されて勝てるはずなんてない。
この運命は、初めから決まっていたものだったのだ。
そうして俺は星歌先輩に3つのおねだりをする権利を得た。
「それじゃ、楽しい買い物ゲーム、スタートですっ! 楽しみですね、先輩?」
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あとがきです。
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かつて僕を振った超絶ビッチな元カノ美少女が、今は義妹になったのに誘惑してくる件
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転生悪役貴族、なぜか秘密結社の危険な美少女達に懐かれる~最凶美少女達のせいで誰も見た事の無い超展開に突入していくけど、頑張って最高のハッピーエンドを目指します~
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