銀の文字

菫野

銀の文字

湖心へとむかふ心臓捧げもつをとめよ白くほそき項よ


百日紅の花びらのごと赤毛降るをんなが天に舞ふひるさがり


街は対の水晶体を磨きつつ秋よりきたる脚たち想ふ


鴉からす歌へば響きわたるとふやがて無垢なる羽根ぬき去るとふ


月あをきドレスの裾を濡らしけるわれ海となり魚を抱きつ


夜を皿のに置くうすきひとさらとなりたる夜は鳥のごと啼く


空に目の湧きいづる昼しづけきに目はいつせいに泪降らしぬ


ちひさなる虚ろ幾つか小瓶より転がりだして宇宙はじまる


海であるわれの胸乳に寄り来たり歌うたふ者放しがたきを


野をたたみポケットに入れ還りゆくわたしは銀の背文字であつた


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銀の文字 菫野 @ayagonmail

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