「じゅうななさい」生活始めました。

音無 雪

じゅうななさい生活日記

いつもより夏を早く感じ始めた梅雨の終わり


地面に写る影も濃く日傘無しでは外を歩くのも厳しいですね。

乙女が日焼けと戦っている苦労を太陽様はご存じなのでしょうか。


太陽様の悪態をつきつつ所用にて地元商店街を歩いております。

ここは意外と風通しも良く快適な場所


活気ある店先を眺めていると、ふと目に留まった手書きの文字


『冷やし中華始めました』


墨痕鮮やかに夏の到来を告げております。

今年も華々しく登場いたしました季節限定メニュー

昨年このお店のおじさまと交わしたお話を思い出しました。


「冷やし中華を始めたことは広く告知なさいますが、終わるときはいつの間にか無くなっているのですよね。少し寂しく感じます。」


そして九月下旬 お店の前に掲げられた手書きの文字


『惜しまれつつ冷やし中華終わりました』


おじさま覚えていらっしゃったのですね。そしてお茶目でございます。

そんなことを思いだしておりますと、お店の戸が開きまして元気よく声をかけられました。


「お久しぶりです。雪ねえさま」


店頭に居たところを見つかったようです。

おじさまが可愛がる一人娘 マミさんです。相変わらず元気ですね。


「今日はお手伝いしてるの 寄っていってください」


そろそろお昼時ですしお邪魔いたしましょうか。

お気に入りなのはカウンター席の一番奥 なんだか落ち着く場所なのでございます。


注文はやはり冷やし中華にすべきでしょう。ひとつお願いします。


「はい 冷やし中華 雪ねえさまスペシャルひとつ」


「あいよ」


あの・・・ 普通の冷やし中華をお願いしますよ。


§


美味しゅうございました。

食べ終わる頃にはお客様も増えて参りまして、そろそろお会計を・・・


「もう少し居てください。雪ねえさまがいると繁盛するから」


私は招き猫でしょうか


「こんちは 音無さんとこの聖女さま来てるって」


「ほら お客さんくるでしょ」


えっ どこから聞いたのですか 

おじさまもマミさんもお店から動いていませんよね。


「最近腰が痛くてね。お祈りしてもらったら治るって聞いたよ」


・・・聖女の術が民間治療になっていませんか 怪しい宗教になっていませんか

おばさま そのお話広げないでくださいませ。



§



マミさんは大学一年生でしたね。学生生活楽しんでいますか。


「通学が大変です。なかなか遊ぶ時間も無いんですよ。大学の近くで一人暮らししたいです。雪ねえさまは一人暮らししたんですよね」


私は学校の近くに親戚が居ますので、お世話になりました。

・・・ではありません。まだじゅうななさいですから大学入学していませんよ。


「聖女さまは歳をとらないからねぇ 大学出て帰ってきてから十七歳の聖女さまだからねぇ」


おばさま 悪意が無いと分かっておりますが何かが刺さります。


これは話題をそらしましょう。

マミさん ケントくんも同じ大学に進学でしたよね。仲良くしていますか。


「偶然同じ大学になっただけで仲良くってほどは」


同じ電車で通学しているそうで


「家が近いから同じ電車になるだけで」


家が近いと手を繋いで同じ電車で通学されるのですね。

先日水族館に出かけられたとお聞きしましたが


「どうしても水族館に行きたいって言うから・・・ って雪ねえさまがどうして知ってるの」


聖女ですからね。

博物館の招待券がありますが御入り用ではありませんか ケントくんの好きな古代文明の特別展示だそうですよ。


「雪ねえさま・・・ 招待券ください」


素直が一番ですよ。明日にでも届けましょう。

あら おじさま ケントくんとのお付き合いご存じなかったですか


「ケント坊がねえ いつの間にか色気づきやがってなあ いつから付き合ってんだ」


おじさま ケントくんがお気に入りですからね。

去年の世界樹まつりのときからでしょうか。


「雪ねえさま それ以上は・・・恥ずかしいです」


今度お茶会にご招待いたしましょう。その時に新婚生活のお話聞かせてくださいませ


――――


じゅうななさい生活の日記帳

大学生マミさんの恋物語でございました。


ノンフィクションエッセイしか書けないじゅうななさいでございます。

尾岡れきさん 自主企画

『😻非公式😻大人のためのカクヨム甲子園2024 ~創作合宿テーマ参加で全員優勝!~』


お題「生活」の作品としてご笑納くださいませ









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「じゅうななさい」生活始めました。 音無 雪 @kumadoor

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