第6話  始業前タックル

陽川さんとスタバで別れた次の日、俺は陽川さんとどう接したらいいのかわからなくなっていた。昨日の陽川さんは照れたり喜んだり怒ったりと感情の起伏が激しかった。

嫌われてはいないと思うんだけどなあ、でも別れ際に怒ってたからなあ。

と考えながら学校までの道を歩いていると、背後から悠が話しかけてきた。


「琉衣、どしたん、話聞こか?あ〜それは相手さんが悪いわ。」

「俺を寝取ろうとするな。」

「わりぃわりぃ、で、どうした?珍しく悩んでそうだけど。」

「昨日放課後に陽川さんと寄り道したんだけどさ、駅で別れる時に怒られちゃって。」

「それでどう接すればいいかわからないと。」「そうそう」

「何か怒らせるようなこと言った覚えない?身長とか。」

「…俺が容姿でなんか言うと思う?」

「思わん。怒らせたって思ってんのならとりあえず謝っておいたら?」

「そうだな。」


そうこう話していると教室の前についてしまった。

陽川さんの様子はどうだろうか、どうやって謝ろうか、そんなことを考えながらドアに手をかける。


(とにかく、教室に入ったら荷物置いてすぐに謝りに行かないと。)


その一心でドアを開けたのだが


「あっ!陰山だ!おはよー!」

「ゔっ」


昨日何もなかったかのように俺のお腹にタックルしてきた。

周りから好奇の目が向けられる。

怒ってたんじゃなかったの?!

◇◇◇

4時間目が終わって昼休みの時間になった。

いつものように悠が俺の席までやってくる。


「それにしても陽川さんなんなんだろうな。今朝入った途端に突撃してくるし、かと思えばそのあとは素っ気ないし。」

「だよなぁ、普通に実行委員の仕事で絡むのならあり得るけどね。やっぱり怒ってるのかなあ。」

「怒ってたら朝タックルしないと思う。」


そんな話をしながら陽川さんの方をチラリと見た。一瞬目が合ってすぐに逸らされる。

俺の目にはやっぱり怒っているようにしか見えなかった。


「ねえやっぱ怒ってるって。」

「なんで今日そんなに弱気なのさ。いつものポジティブどこいったんだよ。」

「ネガティブになったとかそんなんじゃなくて、ただただ心配なんだ。怒らせたってことは傷つけたってことだし。」


そう言い切ると頭に柔らかい感触が、そして誰かの声が聞こえてきた。


「チナっちゃんは怒ってないよ。」


びっくりして振り返ると、そこにはダークブラウンの髪をポニーテールにしてまとめた少女———小山ひよりが立っていた。


「陰山、ちょっと屋上行こうか。」

「え、えっ、ちょっ…」


俺は小山さんに手を引かれながら屋上に連れて行かれた。

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ポジティブ陰キャとネガティブギャル がろんぬ @garoooon

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