第30話 風見鶏令嬢、覚悟を決める

「――ちゃっちゃチャース! 上司に言われて助っ人に来ました~! フォワンヌだしぃ!」


 突然降臨してきた天使――右頬に人差し指を添え、ウィンクして登場したフォワンヌに、ウチの「誰やねーん!!?」がこだました。


 またどえらい派手な天使ときたもんや。上司言うとったけど、性格や話し口調からして、チャランヌの部下か? 


「ノンノン! おれチャンの上司はチャランヌさんじゃないよ〜ん! 尊敬はしているけどねん。おれチャンの上司は、第4天使のユルンヌ様だしぃ!」


 なんやコイツ。人の心が読めるんか?


「そうだしぃ! 読めちゃうんだしぃ!」


「また面倒くさそうな天使が降臨してきたで。ユルンヌの部下やったら、フォワンヌ、アンタも頭のネジ、緩めなん?」


「ノンノン! おれチャン、こう見えても補助天使の中じゃ、断トツで頭良いんだしぃ! 見た目と話口調で決めつけるのは、人間の悪いクセだしぃ!」


「しぃしぃウルサイねん、アホ! それよりも周り見てみぃ! ……って、アリス? なんやの、ポカンとして」


 さっきからずっと、戸惑うようにアリスがウチを見とる。


「ん〜? ああ、彼女がナルシアの録人ヴェリスタかぁ〜。使姿に、果たして新たなる教典が紡げるのか、……だしぃ!」


「へ? 天使の姿を見ることができないって、どういう意味なん?」


「ニーナ、今ここに、本物の天使――フォワンヌ様が降臨されていらっしゃるの!?」


「ん? せやで? なんやアンタ、見えとらんの?」


「恥ずかしながら、生まれてこの方、天使様の御姿を拝見したことがないのですわ。教会堂に置かれている天使様方の彫刻から、その御姿を想像していのたですが……」


 ぎゅっと口を噤み、アリスがウチの視線の先に手を伸ばす。確かにその先にフォワンヌがおるけど、実体を掴むことはできひん。その手を組み、アリスが祈りを捧げる。


「フォワンヌ様、どうかロリーナ様をお救いくださいまし。この御方こそ、ナルシアの希望。わたくしたちの救世主様なのですわ」


「どうするんだしぃ、ニナニナ? おれチャンは今、キミの助っ人で降臨してきたんだよ〜。上司からは、キミの救済活動の補助を頼まれてきたんだしぃ」


「ユルンヌが? そうか、ホンマ、よう分からん天使サマやで。せやけど、ウチの助っ人なら、アンタはロリーナ様の命を救ってや。そんかし、この国の争いを止めたる」


「ヒュ〜! さすがは五大天使様が一目置いているだけあるんだしぃ! ……分かった。なら、キミの望みを叶える手助けをしよう」


 フォワンヌがサングラスを外した。ピンクゴールドの瞳が、ウチに向かい微笑んだ。


「こっちはおれチャンに任せて、キミは彼らを止めるんだしぃ。――大丈夫。キミが言った通り、キミ達救世主には、天使の加護がついている」


 マジメな顔付きで、ウチの背中を押すフォワンヌ。


「さあ、ここからが東亜の風見鶏――ニナニナによる救済活動だしぃ」


 うん、と頷いてから、ウチは教会兵とアンフラミストが銃撃戦をしとる所まで走った。













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