金賞なんだからいいじゃん
小学校と中学校で合唱をしていたけれど、当時はなんとも思わなかった「ダメ金」という言葉が、今はあまり好きではない。
小学校では「Nコン」と呼ばれるコンクールに出場していた。地区大会を突破することの一度もなかったけれど、音楽の先生はちゃんと希望を持っていて、私たちに県大会の制度を教えてくれた。当時のルールだが、どうやら県大会の金賞が三校あるなかで、ブロック大会に進めるのは二校。この場合、金賞だけれど次に進めない一校が「ダメ金」となる。今のは私なりの言い方だけど、先生の説明は小学生にも分かりやすかった。
それから二年後、市で唯一の合唱部がある中学校の二年生になった。県全体だと強豪校も多いからこそ、悲しい事実ではある。中学校では夏のコンクールが二種類になった。略称は「Nコン」と「全日本」、かなり傾向が違って、いい成績を収める学校も変わることがある。全日本では初めての支部大会(先ほどのブロックと同じ規模)に進んだ。ちなみに、この年の終わりにコロナが発生するので、二年生にして最後のコンクールとなってしまう。休憩しながら顧問の先生となんとなく話していた。
「支部大会は、金賞の中から代表が選ばれる」
どこかで聞いたと思って尋ねた。
「え、ダメ金あるんですか?」
「あるよ」
横から同級生が入ってきた。
「なに、出目金?」
なんでコンクールの話の途中に金魚が出てくると思うの。今でも「ダメ金」と聞くとそれを思い出して、少し笑ってしまう。
本当にダメ金の成績になった私たち。でも、金賞であることが意外で、帰りのバスは幸せに満ちていた。帰宅して母に「ダメ金だったよ」と平坦なテンションで告げると、とても喜んでくれた。
「三年生の先輩のおかげだと思う」
「みんなでとった金賞なんよ」
そのチームの一員なんて自覚はなかったけれど、その言葉にやっと実感がわいた。
それぞれの学校に目標がある以上、悲しい気持ちになることも否定はできないけれど、金賞をとったら、その事実は大切にしてほしいです。以上、当時のことをぼんやりと覚えているOGでした。
夜型さんのエッセイ帳 阿部蓮南 @renalt815
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