「相談室」という、当たり前に与えられた十代の時間とは少し違う場所で過ごした作者が、その目で捉えたものたち。そのどれもが、その年代の感性でしか掴め得ない新鮮な輝きを放っています。「春」に始まり、「卒業」でしめくくられる連作には、「チューリップ」、「初夏」、「サイダー」、「秋の蝶」、「憂国忌」、「凍雲」と、移り行く季節が丁寧に織り込まれています。読み進めるうちに、読者もまた、「相談室」の一員として、作者の視線で世界を見つめ直していくような静かな感動に包まれる名品です。