呪姫（じゅき）！！

第０話

　昔々の遠い国のお話です。

　緑豊かな自然に囲まれたミルクのように白く美しいお城に小さなお姫様が住んでいました。

　幼いながらに聡明で佳麗なお姫様は周囲の人々から尊敬され、愛されていました。お姫様は立派な矜持を持っています。

　お姫様には誰にも言えない秘密がありました。

　おねしょ癖です。

　ある夜、高貴な妖精がお姫様の元にやって来て「悪癖を綺麗に抜きなさい」と言いました。

　しかし、プライドの高かったお姫様は「それに当たるようなものは持ち合わせていない」と嘘をついたのです。

「嘘はいけない」と妖精は頻りに言いましたが、お姫様は頑なに認めませんでした。

　すると妖精は恐ろしい魔女の姿に変わります。

　お姫様は驚き必死に謝りましたが手遅れです。

　魔女はお姫様に呪をかけました。

　十二の年までに一度でも粗相すると世界が滅ぶ呪です。

　お姫様はこのことを決してお城の外に漏らしてはならないと城中の者に命じますが、どうしても誰かに話したくてたまらない男がいました。

　男は耐えきれなくなって森へ向かいます。

　そして葦の近くに深い穴を掘り、穴に向かって大きな声で叫びました。

「お姫様にはおねしょ癖！お姫様にはおねしょ癖！」

　さらに大きな声で―。

「お姫様の粗相は世界の滅亡！！」

　気分はすっきり。

　穴を塞いで帰りました。

　しかし塞いだ穴から生えた葦が男の言葉を喋り出し、お姫様の秘密が国中どころか国境を越えて広まってしまいました。

　お姫様は意気消沈します。

　尊敬され愛される姿は見る影もありません。

　お姫様の呪いが解かれる日は来るのでしょうか。