ニトギニアンの嘲笑歌
鈴ノ木 鈴ノ子
にとぎにあんのちょうしょうか
惑星スタールにはあざ笑う歌がある。
馬鹿で間抜けなニトギニアン、国があるのに他に売って権利を自ら放棄した。彷徨う民は人で無し、触れ合う側から穢れるそ!決して構うな!触れ合うな!
全大陸の共通言語すら覚束ない惑星であるのに、この歌のリズムと歌詞は世界的に訳されて子供から大人まで諳んじることのできる歌で情けない亡国国民につけられたものだ。
カサバリア自治集合体(旧ニトギニアン国)、昔は経済も軍事も良くできた王政国家であった。周囲を敵と味方に挟まれながらも国を維持していたが、ある時、王政が他国の手により倒れて、共和政治へと移行した。
長い歴史を誇り階級制が残っていた国は、直ちに民主化て憲法を整え権利などが超え高々に叫ぶことができるようになる。自治体は各自が特色を出せるようになった。権利の前に新政府は弱腰で権利を主張する連中から突き上げられては、謝罪して賠償をしてばかりであった。
なにより、愚かしく馬鹿馬鹿しかったのは、大多数の意見を聞かず、少数の意見をさも大多数の意見とマスコミが吹聴し、情けないことに情に流されやすい国民性により、彼らの権利は優先されて大多数の権利はどんどんと削がれていった。
権利をある程度手に入れたい少数の彼らは、この国民の欠点を探り出すことに成功した。
外国勢力からの圧力に弱く、先読みのできない日和見主義の短略的な思考者ばかり。
政治的中枢ですら未来の語れない連中ばかりであり、行き当たりばったりの政策と公金のばら撒きしかできぬ、100年先の未来どころか10年先の簡単なビジョンすら考えることもできぬ連中、もはや、手に取るように扱いやすかった。
先細りしてゆく国民数と反比例するように外国人を受け入れる政策を政府が始めると、ありがたいことに帰化にしろなんにしろ、この国の理念を守るという他国で当たり前の宣誓すらない、それすらも権利の侵害と考えていた節もある。
国の舵取りを担うとも言える選挙すらも、かの国で暮らす外国人は手にすることができるようになると、少数の権利は大多数の権利へと様変わりした。
彼らが少数になったのだ。
彼らは自分達の権利を超え高々に主張したが、それは全て黙殺された。連中のことなど知ったことてはない。選挙で大勝を得ることができたため、気にする必要すらなくなったのだ。
選挙結果を元に新たなる法律が整備され、自治体は外国人を50%以上雇い入れること、及び暮らさせること、なにより、難民を積極的に受け入れることとなる。こうなればあっという間に自治体の構成は変貌してゆく。
さて、各自治体の一部から独立戦争なる暴動が発生すると、政府は話し合いを掛け合った。すでに一部勢力と結託していたため、解決策として自治州としての統治を認めた。ちなみに元の住民は保護を望んだが、政府は平等の権利に抵触するからと断り、この決定に海外から賞賛の嵐を浴びる。
自治州が持てる希望を喧伝して各国はこぞって渡航費を補助した。
やがて次の選挙で、主権停止と新しい国家の設立が焦点となり、ついにカサバリア自治集合体が出来上がった訳だ。
彼らは国を失い、権利を行使するための力も失った。自治集合体では旧勢力に分類される彼らの権利は危険思想の扱いなのだ。彼らから没収した資産と企業を売り払って、自治集合体は内政を急速に整えつつある。
このことからの教訓はなにか。
簡単な話だ。
情ではなく情報と理論で判断するのだ。
また、大多数と安心してはならない、あなたは良くても、あなた達の子孫が不幸になる。
きちんとした共存共栄のためにも真正面からきちんと対応することだ。ただ相手の言うことを聞くだけが相手をどれほど傷つけるか理解すべきだ、互いの人間としての尊厳を守るためにも、これは必要なことに他ならない。
ともに手を携えることは大変に難しい。
だが、それから逃げることなどできない。国の成り立ちと、国民の成り立ち、そして彼らのルーツを尊重しつつも、私達とともに歩める人と一緒に歩むことが大切なのだろう。
あなたが隣人を愛していても、隣人は愛していない事もある。なぜ愛してくれないのかと嘆くよりも、なにが愛されないのか考えるべきだ。
そして改めるではなく、互いが許せる妥協点を探すべきだ。妥協点を探さずに相手に合わせるということは、相手そのものを軽視し、そして馬鹿にしているに他ならない。
相手の自尊心と誇りを踏み躙る行為と考えるべきだ。
無理なものは無理、ここまでなら良いを、長い年月を経てでもきちんと考えるべきだ。
それ以外に正しい道はないのだから。
できなけれは、次に歌に読まれることになるだろう。
ニトギニアンの嘲笑歌 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki
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