第22話 予期せぬ真実

男と伊達が見つけた隠し扉の奥には、狭い通路が続いていた。壁は粗く、ところどころに古びたレンガがむき出しになっている。その先に何が待っているのか、二人は互いに無言のまま慎重に進んでいった。


通路の先にたどり着いた二人が見たのは、思いもよらない光景だった。そこには広い地下室が広がっており、壁には何枚もの古びた地図や図面が貼られていた。中央には大きな円卓があり、その上には無数の書類や古い本が散らばっている。


「ここは…まるで地下の作戦室みたいですね。」伊達が驚きを隠せずに呟いた。


「どうやら、ただの調査施設じゃなかったようですね。」男もまた、驚きながら周囲を見渡した。彼は円卓に近づき、そこに置かれた書類の一つを手に取った。それは、彼の仕事に関連する極秘のプロジェクトに関するもので、これまでに目にしたことがない情報が詳細に記されていた。


「こんなものがここに…」男は信じられない思いで書類をめくった。


その時、部屋の奥から何かが動く音が聞こえた。二人はその音に反応し、声を潜めて音のする方に目を凝らした。


「誰かいるのか?」男は恐る恐る声をかけた。


返事はなかったが、代わりに足音が近づいてくるのが分かった。二人は構えて、その足音の主を待ち構えた。やがて暗がりから現れたのは、スーツ姿の男性だった。


「これは驚いた。まさかここで君たちに会うとはね。」その男は冷静な声で言った。


「あなたは…?」男は問いかけた。


「私はこのプロジェクトの責任者だ。この施設で何が行われていたのかを知る権利があるのは、私だけのはずだったが、どうやら君たちも少しばかり好奇心が旺盛のようだな。」男は冷笑を浮かべながら言った。


「一体、ここで何が行われていたんですか?」男は鋭い目で問い詰めた。


「ここはかつて、都市再開発に絡む一連の調査を行うための拠点だった。だが、計画は途中で頓挫し、この施設も放棄された。しかし、ここにはまだ重要な情報が隠されている…それを君たちが見つけてしまったというわけだ。」


「重要な情報?」男は怪訝な表情を浮かべた。「それが何であれ、我々には知る権利があります。あなたは何を隠しているんですか?」


責任者は一瞬躊躇したが、やがて重い口を開いた。「このプロジェクトは、単なる都市再開発に留まらない。ここには、過去に行われた数々の実験のデータが隠されているんだ。その一部は、非常に危険なものだ…もしこの情報が外部に漏れれば、都市全体が危機に陥る可能性がある。」


男はその言葉に衝撃を受けたが、さらに問いかけようとしたその瞬間、責任者は手に持っていた装置を操作し、部屋の照明が一斉に落ちた。


「何をするつもりだ?」男は叫んだが、返事はなかった。暗闇の中で再び不気味な音が響き始めた。


「急いでここを出ましょう!」伊達が焦りながら男の手を引いた。


二人は再び通路を駆け抜け、何とか元の廊下に戻った。振り返ると、先ほどの部屋からはもう何も聞こえてこなかった。二人はようやく息を整えながら、現実味を帯びた危険に直面したことを実感した。


「一体、何が隠されているんでしょうかね…」伊達は不安そうに言った。


「わからない。ただ、私たちはとんでもないものを掘り当ててしまったのかもしれない。」男はそう言いながら、再び冷静さを取り戻そうとしていた。「でも、これで終わらせるわけにはいかない。真実を突き止める必要があります。」


二人は再び建物の外に出た。ここから先、どのような危険が待ち受けているのか、彼らにはまだ分からなかったが、男は決意を新たにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】静かなる送別 湊 マチ @minatomachi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る