第21話 真実への一歩
建物の外に逃げ出した男と伊達は、荒い息を整えながら、異様な光景を見つめていた。建物の中からは、まだ奇妙な光の粒子が漏れ続けている。その光景は、まるで別世界にいるかのような感覚を男に与えていた。
「これ…本当に何なんでしょうね。」男は、自分の見ているものが現実なのか疑いながら、伊達に問いかけた。
伊達は顎に手を当て、少し考え込むようにしながらも、いつもの調子で答えた。「いやー、お客さん。これはもう完全に、未知の領域ですね。もしかして、異世界へのポータルとか…いやいや、そんなことないですよね?」
「冗談はさておき…」男は眉をひそめながら続けた。「あの装置が何かを開いたような気がします。もしかしたら、この建物全体が何かの実験施設だったのかもしれない。」
二人がそう話している間にも、建物の中から奇妙な音が断続的に聞こえてきた。まるで何かが動き出そうとしているような、その音は、男の心にさらなる不安を掻き立てた。
「もう一度、中に戻るしかないかもしれませんね。」男は決意を固め、伊達の方を見つめた。
「いやいや、また中に戻るんですか?スムーズムーブは引越しの専門家ですよ!未知の探検は専門外ですって!」伊達は両手を上げて抵抗する仕草を見せた。
「わかってますよ。でも、あれを放っておくわけにはいかないんです。おそらく、この建物にはまだ隠された何かがあるはずです。それを見つけないと…」男は真剣な表情で伊達を説得しようとした。
伊達はため息をつきながらも、「仕方ないですね…お客さんがそこまで言うなら、お供しますよ。ただ、今度はちゃんとした装備を用意しましょう。例えば、ヘルメットとか、懐中電灯とか…」と、少し冗談交じりに言った。
「それなら、近くのホームセンターにでも行きますか?」男は笑いながら応じた。
二人は急いで近くのホームセンターに立ち寄り、懐中電灯や簡易的な防具を購入した。準備を整えた後、再び建物の前に戻り、意を決して中へと再突入することにした。
建物の中は、先ほどよりもさらに不気味な雰囲気に包まれていた。廊下には霧のようなものが漂い、視界が遮られている。男は伊達と共に慎重に進みながら、再びあの部屋を目指した。
「ところで、お客さん。この仕事の依頼って、最初からこんなに危険なことだったんですか?」伊達は小声で尋ねた。
「いや、こんなことになるとは思ってなかったですよ。」男は苦笑いしながら答えた。「ただ、こういう展開になると、逆に真実が気になって仕方がないんです。」
二人が廊下を進む中、再びあの部屋の前にたどり着いた。扉は先ほどと同じくわずかに開いており、中からは光が漏れ出している。男は深呼吸をし、ゆっくりと扉を押し開けた。
しかし、彼らが目にしたのは、先ほどとは違う光景だった。装置は静かに停止しており、モニターには何も映っていない。まるで全てが消え去ったかのように、部屋は静まり返っていた。
「何が…起こったんだ?」男は部屋の中央に立ちながら、周囲を見渡した。
「うーん、これで全て解決したってことですかね?」伊達は肩をすくめながら言った。
「いや、何かがおかしい。」男は直感的に感じた違和感を口にした。「これだけでは終わらないはずです。何かがまだ隠されている…」
その時、壁の向こうから微かな音が聞こえた。男と伊達は顔を見合わせ、音のする方へと歩み寄った。壁には小さな扉が隠されており、そこから何かが聞こえてくる。男は慎重に扉を開け、さらに奥へと進んだ。
そして、彼らが目にしたのは…。
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