誰かを大切に想うからこそ、自分の気持ちを押し込めてしまう。
我慢した先のご褒美のようなものを、身勝手にも期待することは悪いことなのでしょうか。あの人の理想の誰かにはなれないと分かってはいても、心だけが置いてけぼりで。
学生の頃から結婚なんてしないと言ってきた私が、気まぐれで参加したイベントで出会った彼とメールでのやり取りをする話です。
私の独白。
あの時のことを振り返るかのようにして語られる物語はどこか独りよがり。だからこそ、等身大の切なさのようなものが込み上げてくるのです。
彼とやり取りを続ける中で、脳内で補完し出来上がるのは彼のような何か。それに対して彼は私のいない時間を過ごす。
どうやったって自分に気持ちが向いていないことに気が付く。
この乖離した気持ちが、生身で、生きているかのような心理描写によって、ズキズキと流れ込んでくる感覚が素敵でした。
様々な理由を付けた上での我慢という選択肢の果て。
それは、碧く大きすぎる。
あの景色に圧倒される気持ちと似ているのかもしれない。
素晴らしい作品をありがとうございました。