第11話 答え

■茶房【八戒】


 しばらく沈黙が続いていたが麗華が口火を切る。


「私は……貴方たちと中国へは行きません」

「ふーん、ボクの申し出を断るんダ?」


 金色の龍の瞳が輝きだした。

 麗華にはわかる、これは怒りや苛立ちであると……。


「はい、私がもし【贄】であるならば、帝都で襲われなかった理由がみえません。もしかしたら本当にそうかもしれませんけれど、なおさら自分でこの横濱で過ごせるように学びたいんです」

「なるほどネ……面白い娘だよ。こういうのを”千人に一度の逸材”っていうんだろうね」


 陳から放たれる殺気に近いものを受けつつも、麗華はは凛として自分の意思を伝えた。

 母親が倒れてからというものの、萩原の家では肩身が狭く、自分の意思を出すことができない。

 そんな生活が長かったが、神谷に助けられてから自分らしくいてもいいということを伝えられたので、とても感謝していた。

 だから、ここで陳の言葉を聞いて神谷を裏切る訳にはいかない。


「わかったヨ、キミを無理やり連れていくこともできなくはないケド。今はここで麒麟隊とことを構えたくないからネ」


 陳は金色の瞳を閉じて優しく微笑みを浮かべた。

 緊張した空気がゆるみ、麗華はハァと大きくため息をつく。


「【贄】については伝えたから、あとはキミがこの運命をどう過ごすのかを見させて貰うとするヨ。気が変わったらボクの下に来てくれると嬉しいナ」


 そういうと陳は立ち上がり、部屋から出ていった。


◇ ◇ ◇

 

 しばらく呆然としていた麗華だったが、階段を駆け上がってくる音で意識を取り戻す。


「大丈夫ですか? 静かすぎて不安でしたが、騒がしい音が聞こえなかったので様子をみていましたけれど……」

 

 風見は椅子に座って呆然としている麗華を見下ろしていた。


「はい、大丈夫です……心配かけました。あの一つ、相談してもいいでしょうか?」

「僕でよければですが……」

「私も事務等でいいので、皆さんの隊に協力させていただけないでしょうか?」

「はい?」


 麗華の言葉に風見の綺麗な顔が崩れる。

 予想外のことで戸惑っている様子が明らかだった。

 

(私は知らなくちゃいけない、もっと【怪異】や【異能】について……)


 麗華が出した答えは自らを危険の真ん中にもっていく行為でもある。

 それでも、ただ待つばかりはもう嫌だったのだ。

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