第7話 心の精霊と勇者様。

「マズイわよ、ルク!彼女から離れて!」

「っ!」


 俺はアスタリスの声が聞こえたとともに後方へ下がる。

 それから次の瞬間、さっきまで俺の居た場所に小さなクレーターが出来ていた。


「ふーん、意外と強いんだ」


 サラは無表情なままでそう呟く。

 これが生まれたての精霊って、絶対嘘だろ!


「ルク、また来るわよ!」


 何とも言えない感情に嘆いていると、再び圧迫感が俺を襲い始める。


「おっと」


 俺はその場から離れ、サラの攻撃を回避。

 その場には先程同様、クレーターが出来ていた。

 そっちがそんなに遠慮なく攻撃するってことは、される覚悟も出来てんだろうな!?


「タリス!」

「恵みの木々達よ……。私の命と共に!」


 アスタリスが権能を発動。

 アスタリスの足元から大量の木々がサラを襲う。

 その攻撃は命中し、サラを拘束する。


「よし!タリス、そのまま……」


 俺はアスタリスの方を見る。

 そこには、確かに先ほどまでアスタリスがいたはずなのに、忽然と姿を消していた。


「邪魔だからね。退場してもらったよ」


 サラの声が淡々と辺りに響く。

 俺が振り向くと、サラの顔が鼻の先が触れ合うほどに近くにあった。

 俺は驚いて、その場に尻餅をついてしまう。

 だが、サラはそんなことお構いなしにもっと距離を詰めてくる。


「これでやっと二人きり」

「……何がしたいんだ」


 嗜虐的な目をしているサラを睨み付ける。

 サラの権能が分からない以上、下手なことは出来ない。

 ここは彼女の目的を聞くのが得策だろう。


「私のしたいこと……?私のしたいことはあなたと同じだよ」

「何を言って……むぐ!?」


 疑問を口にした刹那、俺の唇にサラの唇が深く押し当てられる。

 サラの舌が俺の口内へ入ってきて、俺の口の中を引っ掻き回し、時にはサラの唾が流れ込んできた。

 最終的にはサラの舌が俺の舌を押さえながら唾を流し込んできたため、半ば強制的にそれを飲み込まされ、糸目を引きながら唇を離される。

 俺は何が何だか分からずに、その場で固まっていた。


「これでおしまい」


 サラのその声とともに、ガラスが割れるような音と辺りの景色が変わる。

 なるほどな……。


「サラ。お前の権能は、他人の心と自分の心を直接繋げること。そうだろ」

「さすが私のお婿さん。大正解」


 サラは俺の上に乗っかったまま、賞賛の拍手をする。

 誰がお婿さんだ。


「……とりあえず退いてくれ」

「分かった」


 案外素直に退いてくれたので、俺は口内の違和感を感じながらも立ち上がる。


「なるほど。となると、さっきの熱烈なディープキスは契約ってことか」

「そうゆうこと」


 実のところ、精霊の契約は精霊によって違う。

 ただ手を繋ぐだけという簡単な内容の精霊も居れば、殺し合いというマニアックな契約方法の精霊だっている。

 だが、こんな印象的な契約方法は初めてだ。

 俺、さっきのがファーストキスだったんですが?

 おい、やめろ。ガッツポーズするんじゃねえ。

 心の精霊だから考えてること丸分かりってことは理解してるけど、ファーストキスでそんなあからさまに喜ぶな。


「ってか、最初戦う必要あったか?」

「ああ、あれは拘束しようとしただけで、戦闘意思は無かったから」

「いや、それはそれで怖いんだが……」


 あれは確実に死ぬ威力だった。

 拘束?どこがだ!あれは攻撃っつうんだよ!


「……ううん」


 と、怒り狂っているところで、地面に何人か転がってますね。

 ミセリア、アスタリス、マユザ、レフィティリア。

 四人は何とも苦しそうな顔をしながら眠っている。


「サラ。一応聞くが、コイツらにどんな夢を見せてるんだ?」

「私とルクが結婚した夢」

「………起こしてあげてくれ」

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勇者パーティを追い出された勇者様。 瑠璃 @20080420

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