第6話 新たな精霊と勇者様

「はあ……。タリス、お前を呼んだのは頼みたいことがあるからだ」

「なあに?あ、もしかして結婚?プロポーズ?喜んで!」

「違うし、そもそも俺はまだ結婚できる年じゃない」


 この世界での結婚出来る年齢は18歳と世界共通で決まっている。

 俺はまだ16歳だから結婚できません!


「タリス。お前には新しく生まれた精霊の居場所を探ってもらいたいんだ」


 アスタリスは樹林そのものであり、森の中で起きていることは手に取るように分かるらしい。

 だから呼んだのだが、ホントに大丈夫だろうか……。


「ふふっ。お姉さんに任せなさい!いいとこ見せちゃうわよー!」


 俺の不安は露知らず、アスタリスは権能を発動。


「『木々達よ……、私の歌声を聴いて』」


 精霊独自の言語で発動された権能は、ここら一帯の木々を揺らし、まるでアスタリスの存在自体を祝福しているようだ。


「どうだ……、タリス」

「……そうね。こっちよ」


 タリスは自然と歩みを進めていく。

 その向かった先は、『恵みの泉』のさらに奥にある森へと続いた。

 ここまで来るのは初めてだ……。


「タリス、一体どこまで……ったぁ!」


 かなり進んだところで、アスタリスが急に止まり、彼女の背中が俺の顔に直撃する。

 いってえ……。


「タリス……?急にどうした……」

「マズいわね」

「え……?」


 アスタリスの呟きに首を傾げる。


「ルク、みんなは……?」

「え……?すぐ後ろに……って居ねえ!」


 後ろを振り向くと、先程まで居たはずの3人が消えていた。


「けど、気配はこれでもかってぐらいビリビリ感じるんだよな……」

「うん、私も。けど、気配だけ」


 これは、新しい精霊の権能と見て間違いなさそうだ。

 もしかしたらアスタリスともはぐれるかもしれない。


「タリス、離れないようにしろよ」

「じゃあ、手を繋いで……」

「ヤダ」


 アスタリスが「なんでよー!」と泣きわめくが、当たり前だろ。


「と、来客だな」

「……!」


 タリスが俺の視線の先に目を向ける。

 その先には、ピンク色の髪をした少し背が低めの女の子がいた。


「ここまで近づかれるまで私が気づかないなんて……」

「それはただ単にお前がショタコンだからじゃ……」


 ともかく、俺は彼女と会話を試みる。


「『よ、君の名前を教えてくれないか』」


 精霊語を流暢に話しながら彼女に近づいていく。


「『……サラ』」

「『サラか。素敵な名前だ』」


 俺が微笑むと、後ろから「はあっ!尊い……!」というアスタリスの声が聞こえてきた。

 やかましい。


「『サラ、よければ俺らと一緒に暮らさないか?君みたいな精霊がいっぱいいるんだ』」


 俺がさらにサラへ近づくと、俺の体が急に重くなる。

 な、何だ……!?


「『私はサラ。心の精霊・サラ』」

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