第2話 下準備

魔大陸を混乱の渦に陥れたサータンの宣言から1年経ち、四天王から後継者を決める戦争の開始が宣言された。


この宣告を与えられた魔大陸の端の領地で聞いていたテンマ


「はぁ、始まっちゃったよ......。」

『ねぇ、やっぱり魔王はいや?』

「嫌だし、無理だと思うな、姉さん。当たり前かもだけど、僕の敵はしっかり化け物だよ」


15歳のテンマに対し、長男は137歳と平均寿命が300歳ほどの魔族において、全盛期かつヒューマンの侵略戦争にも参加している兄たちとは大きく差が開いているのだ。


『じゃあ、戦いを傍観するだけ?』

「いや、有力そうな兄の庇護下に入れてもらうために程よく領地を発展させようかな。さすがに生まれて15年で何もせずに死にたくはないからね」


テンマは領地の地図を広げ、印のついた場所に向かった。そして、姉であるヴィアも当然のようについてきた。


「姉さん、暇なの?」

『うん、暇だよ。でさ、ここには何しに来たの?』

「価値は希少性で決まるからね、僕にしかできないことをやろうかなって」


近くにあった集落で天候など様々なことを聞いた。


(ここならできるか)


『領主様、私たちは何をすれば』

「村長、この村の農民はすべてミルキ草を育ててもらう」

『ミルキ草ですか?それは一体?』

「これから必要になる草だよ。他の場所で大規模な農地を作るから、そこの農作物を始めは無償で支給するように手配するから、餓死の心配はしなくていいよ」


テンマは部下に他の候補地を視察させていた。


「じゃあ、よろしくね。」

『かしこまりました』


そして、今度は屋敷に戻って書面とにらめっこしていた。


日が沈み、部下も無事に農地に適した場所を見つけたと報告を受けた。


『ねぇ、そんなに都合よく見つかるものなの?』

「魔大陸の土地は全体的に魔力を含みすぎて農作物が育ちづらいから、徹底した管理の元で作られているのは知ってる?」

『育ちづらいのは知ってるよ。』

「細かい話は省くけど、僕は準備期間に魔大陸でもよく育つヒューマンの魔イモの苗を取り寄せた」


当然ヒューマニアにも魔大陸ほどではないが、魔力が多く含まれた土地がある。作物の品種改良が魔大陸よりはるかに進んでいるヒューマニアの魔力によって成長するイモを取り寄せていた


「だから、候補地となる場所の条件は広いことくらいだったから、すぐ見つかったんだよ」

『でも、どうやってヒューマニアの作物を手に入れたの?』

「あったことのない父でも息子のおねだりは断れないってことだよ。」

『ふーん』


そして、少し不満そうな顔をして、ヴィアは部屋を出ていこうとした


「姉さんには退屈だったよね。明日も僕に付いてきて、今日よりは楽しくなると思うよ」

『ふーん』


少しだけ機嫌が直った気がした

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伝説の魔王の後継者は100人の息子たちのバトルロワイアルで決めるそうです ニケ @N_rui

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