伝説の魔王の後継者は100人の息子たちのバトルロワイアルで決めるそうです

ニケ

第1話 異世界戦国時代

かつて、世界では妖精王率いるエルフ、英雄王率いるヒューマン、魔王率いる魔族、この三種族による血で血を洗う戦いが行なわれていた。この戦いに嫌気がさした創造神が世界を亜大陸、ヒューマニア、魔大陸の三つの大陸に分け、各種族間の戦争は次第になくなっていった。


そうして、世界では約1000年にも及ぶ平和が実現された。


しかし、300年前にエルフとヒューマンの同盟により、平和が壊された。同盟を組んだ二種族は魔大陸に大きく侵攻し、当時の魔王を殺すことに成功したが、同時に歴代最強の魔王であるサータン・クロムウェルが歴史に姿を現した。


サータンが57歳で魔王となり、100年で失った領地のすべてを取り戻し、魔大陸からエルフとヒューマンを追い出すことに成功したのである。


『此度の戦争で完全に侵略者どもを追い出すことができた。侵略が始まり300年、長きにわたる戦争をよく耐え抜き、勝利に繋げた。皆、ご苦労であった。』


勝利宣告を行なう魔王城内では各所で魔王を称える声が聞こえてきた。


『そして、我は疲れた故、魔王を引退する』

『は!?』


四天王から一般兵に至るまでが困惑の色を示した。それもそうだ、魔族の寿命はヒューマンに比べても長い。これから、最強と称される魔王とともに快進撃が始まると皆が思っていたからだ。


『そして、次の魔王は我が息子100人にそれぞれ領地を与えて、魔大陸を統一したものに継がせようと思う。準備期間は1年だ。もう我は魔王ではない故、よろしく頼む。』


次の日、魔大陸全土にこのことが知らされ、全魔族が頭に『?』を浮かべた。

それは、魔王の末子の第百魔王子であるテンマも同様であった。


「何を言っているの?僕の父は?」

『魔大陸はまた荒れますな』


執事のショーンに文句をこぼすテンマ。


「僕、まだ14歳だよ?来年やっと成人なのに、超めんどくさいよ......。」

『テンマー!魔王になるってホント?』


部屋に入ってきたのは、五つ上の姉であるヴィアである。


『ヴィア様何度も申し上げておりますが、ノックをお願いいたします』

『うるさいショーン。殺すよ?』


御覧の通り、魔王の娘にふさわしい性格である。


「魔王になるための争いに巻き込まれるだけで、魔王になるわけじゃないよ、姉さん。それに、魔王になる気もないしね」

『やっぱり?残念だなー』


-------------


そして、魔王城では、後継者争いのルールを決めていた。


『四天王が戦いに介入してしまえば、その勢力が有利すぎるのではないか?』

『では、サータン様に仕えていた我々を動かすためにはそれ相応の報酬を出さなければならないというのは?』

『それだ!他にも決めねばなるまい。1年以内に』


こうして、次々とルールが決定された。


魔族たちは初め混乱していたものの、ルールなどの後継者争いに必要となる準備が早急に決められていった。


なぜこんなにも順調に進行しているかというと、先の戦争で軍事的なダメージを与えたが、いつ侵略するか分からないヒューマンとエルフに対抗するために、早く魔王を決めたいから?魔王を決めて、魔族の人々を安心させるため?

否、単純に楽しみなのだ。99人の王子たちの屍の上に立った次の魔王がどんな者なのか、そして、その魔王を決めるためにどのような戦いが起こるのか、が。

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