お風呂ってなんであんなに怖いんでしょうか

うしろ......

　あの、お風呂入ろうとするじゃないですか。私、脱衣所からもううっすら怖いんですよね。

　怖がりなだけだと思うんです。家族は普通に入っていいるし、子供じゃないんだから、20歳にもなってこわいなんて言っている友人もいない。

　でも、怖いものはみなそれぞれ違うじゃないですか。だから、そいいうもんだと思ってはいるんです。

　ゆっくりお風呂の扉を開ける。元からこの色だったのか、黄ばんだプラスチックでできた床。そこにちょこんとおいてある風呂椅子はちょっと足元がかびているが、白い。そこに座れば目の前には浴槽とタイルの壁、そしてすりガラスの窓が目に入るんです。

　それでまあ髪の毛を洗うんですよ。私、髪の毛から洗うタイプなので。手の届く範囲にあるシャンプーのボトルをプッシュして、3回くらい。それで、少し前かがみになって洗います。洗ってる間、地肌をしっかりとだとか髪の毛傷めないようにだとか考えるんですけど、ふとこんなことも考えるんです。

　うしろなにもいないよな。

　って。

　うしろは壁でもちろん人間の入る隙間とかそんなものはありません。

　だけど、あれがあるんですよ。鏡が。だからそっから出てこないかななんて思うんです。

　でも、私にも私なりの対処法があるんですよ。どこかで聞いたんです。下ネタは幽霊が寄ってこないって。なのでいつも怖くなったときは、小学生でもちょっと笑う程度の単語を頭の中でぐるぐる考えることにしてるんです。

　まあそれでも、怖さが消えるわけではないんですが。気休めってやつです。

　だけど、その日はそれで落ち着いたんですよ。少しほっとして目を開けてしまいました。風呂椅子の下からたらーって何か流れてきたんですよ。黒くて細長い。そう髪の毛でした。たくさんの髪の毛が流れてきてぞっとしましたよ。

　自分の髪の毛でした。

　今まで言ってなかったんですが、私ロングヘアなので。流れてくるのも当たり前です。少しいつもより多く見えて驚いてしまいましたよ。

　さ、あとは体を洗って、顔も洗ったら、湯船につかって。ひと息の時間ですね。一日の疲れとお風呂の怖さがお湯に溶け出していくようですね。

　そろそろ出ようかというところで、髪の毛を絞ったり、軽く体の水分を飛ばしたりするわけですが、また思うんですよ。

　すりガラスの窓からなんかのぞいてるんじゃないか。

　って。