第17話 安芸は意外とイジワルだ

 合コンは正直苦手だ。


 ニコニコして、愛想を振りまくのは。


 そのことにばかり気をとられて、私は気づいていなかった。


 恵理子が気になっている子を含めて開催されるということは、私に告白したあの子が来るということだ。


 おかげでお互いに気まずい思いをすることになった、と思ったんだけど……どうやらそれは私だけみたいだった。あの子はそんな様子、おくびにもなかった。


 気持ちの切り替えがはやいタイプなのか、それとも彼女が欲しいだけでそこまで私には興味がなかったのか。まあ、いいんだけどね。私も軽い気持ちで田崎くんに告白しちゃったし。



 五対五で開催された合コン。女子側で一番乗り気だったのは、なにを隠そう我らが恵理子だった。


 沙希をはじめとするほかの面々も結構乗り気。一方、あまり乗り気ではない私は、みんなの仲を取り持つ役に注力するハメになった。


 思い出すだけでも疲れてくる。



「はあ……」


「高田さん、お疲れ?」


 私が部屋でのんびりと過ごしていると、安芸はテレビゲームをプレイしつつ訊いてくる。レースゲームをしているためか、コースに合わせて体が動いているのが面白い。


「ごめん。辛気臭いよね」


「べつにそんなふうには思ってないけど」


 今日はとくに〝お願い〟はしていない。するつもりもない。


 それでも、私はなぜか安芸の部屋にいた。



 安芸が学校を休んだのは、結局あの一日きりだった。理由は体調不良らしい。


 合コンのせいで私も体調不良で休みたかったけど、重い体に鞭をうって学校に行くと、すでに安芸の姿があった。


 そうしたら、いっしょにいたいって、なぜかそう思ったのだ。あれだけ気まずいと思っていたはずなのに……



「ボーッとしてるから余計疲れるのかもよ。いっしょにやらない? 対戦したほうが楽しいし」


「そうだね。じゃあ、そうしようかな」


 初めてやるゲームなので操作方法を教わる。


 そんなわけで、ゲームを始めたはよかったんだけど、これが意外と難しい。


 私の体は、安芸とおなじくコースに合わせて右に曲がって左に曲がって……



 安芸のプレイが特別うまいってわけじゃない。それでもこれは安芸のゲーム。当然ながら私のほうが下手……もとい、安芸のほうがうまい。


 何度やっても、私は安芸に勝つことができない。


 なんだかつまらない。それにムカムカしてきた。



「安芸、強いね」


「うぅん、私弱いよ。たまにお父さんとやるけど、全然勝てないし。高田さんが弱いんだと思う」


「…………」


 言ってくれるじゃん。


 そっちがその気なら、私にも考えがある。



 また新しくレースが始まったゲーム。


 また左右に揺れる私たちの身体。たまに爆弾なんかを投げて妨害してくる安芸。そして――。



「ほっ」


 私は手のひらをまえへ伸ばし、安芸の視線を遮る。


「ちょっ……急になにするの?」


「だって、安芸ばっかり勝ってなんかズルい!」


「だってこれそういうゲームだし。高田さんのほうがズルじゃん!」


 今度は安芸が私の視線を遮ってくる。



「見えない見えない! それやめて!」


「じゃあ、まずは高田さんがやめて!」


「安芸がやめたらやめる!」


「なにそれ!」


 もはやゲームそっちのけでお互いの足を引っ張り合う。


 そんなことをしている間に、二人ともタイムアップでゲームオーバーになってしまうのだった。



 なんか、普通に話せてるな。私だけじゃなくて、安芸も。


 なんとも思ってないのかな? 私にキスしたくせに。なんかまたムカムカしてきた。

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