人食い熊たちが、カラオケ店にやってきた。「店長、どうします?」「よだれ出てる」

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 カラオケ店に、 3頭の熊がやってきた。「店長!」「店長!」「熊も、カラオケで歌を歌うんですかね?」「知らん」

 うっそ。

 カラオケ店「地図にのるほどなかよし」に、 3頭の熊がやってきた。

「いらっしゃいませ」

「ええ?」

「店長、どうします?」

 正直いやだったがが、客である以上、断わるわけにもいくまい。

  3頭、いや、 3名の客を 3人の店員がご案内。

 安心できたのは、熊たちに、こう突っ込まれなかったことくらいだ。

「おい、店員さんたち? 1人で良いよ。何で、 3人で俺たちを案内するんだよ!」

 熊たちは、そこそこ従順だった。

 口から、よだれをたらして。

「まさか、こんなことになるとは」

「どうします、店長?」

「有名な店に、なりたかった…」

「エンディングまで泣くんじゃない!」

「ほら、店長に言われているし。泣かないでよ」

「…ほっとけ」

「地図にのるくらいの店に、なりたかったな…」

「お前も、泣いているじゃないか」

「あ!」

「あ!」

  1頭と言うべきか1人、いや、やっぱり 1頭の口から、血も垂れていた。

「店長?熊って、カラオケが好きなんですか?」

「知らん」

「…」

「…」

「とにかく、ご案内するかないよ」

「わかりました」

「他のお客様たちに危害のないよう、個室まで」

「ああ、地図にのるくらいの店…」

「落ち着け」

「…どうぞ、こちらへ」

  3頭の熊を、個室に案内し終えた。

「…あの、店長?」

「何?」

「保健所の人とか呼ばなくて、良いんでしょうか?」

「ハンターとかも」

店員たちがそう話しあっていることなど知ることなく、熊たちは、ドスンドスンと、部屋のソファに腰を下ろす。

「それでは、お客様?何かありましたら、我々店員をお呼びください…ね」

 個室の中で、熊たちが話しあう。

「熊が出る危険マップとか作られてさ~」

「うん、うん」

「俺たち熊は、ホント、人間にうらまれている」

「 5丁目に住んでいるジョン君、ハンターに撃たれたらしいじゃないか」

「らしいね」

「だから、最近、ジョン君に会わないのか~」

「お腹、すいたね~」

「店員さん、呼ぶ?」

「そうだね」

「何かあれば、呼んで良いんだよね」

  3人の店員が行方不明になり、「熊が出る危険マップ」にとあるカラオケ店が追加されることになった。

 熊と人間が共存できるほどの平和スポット、「地図にのるほどなかよし」。

 地図にのる店。

 その店内は今、血まみれ。


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