夏祭り
耳塚
同窓会
僕は18歳で地元を離れた。
東京の大学に進学してから、地元に帰るのは年に1、2回。大学生活もそれなりに楽しくて、当然のように就職先も東京を選んだ。
今、僕は28歳になった。この歳になると親も口うるさく帰省するように言わなくなって、お盆休みも都内の自宅で過ごすことに決めていた。
いつものようにネットサーフィンをしていた時だった。存在も忘れかけていた高校のバスケ部の、グループラインにメッセージがあった。
お調子者のユウジが最後に変更した「ポテチ団」というグループ名に思わずニヤける。懐かしいな、と口にしてからアプリを開いた。
「明日の祭り、来ない?」
メッセージの送り主はやっぱりユウジで、高校生の時も言い出しっぺはいつもあいつだったなと苦笑する。いつまでも変わっていないことを知って、素直にうれしくなった。
「いいね」
普段は保留しがちなLINEの返事も、この時ばかりはすぐに打ち返した。僕が生まれたのは東京、大阪の次に名前が挙がる大きな地方都市で、そのせいか大学進学とともに県外に出た同級生は意外にも少なかった。
地元に残った仲間たちは変わらずに「ポテチ団」でやりとりをしていたから、自分で選んだ進路とはいえ、仲間外れになったような気分でLINEグループの通知を切っていたのを思い出す。
そうやって冷たい態度をとっていた自分にも、名前をメンションして、連絡してくれたのだと思うと、胸が熱くなる。
「いいね、久しぶりにみんなで会おうよ」
すぐにまた別のメンバーからメッセージが来る。
「待ち合わせはいつものさ、森林公園の前でいい?」
「オッケー」
「早めに行けそうなんだけど、誰か来れる?」
「じゃあ俺いくわ。着く時間決まったら教えて」
「りょうかい」
すでに3人の参加が決まった。
急な連絡だったため、残念ながら参加できないメンバーもいて、「次も絶対誘ってよ」というメッセージも流れてきた。
Googleマップで経路を検索すると、森林公園までは自宅から新幹線で2時間。
「行くね」
とメッセージを打つなり、すぐに新幹線の乗車券を予約した。
けれども今になって思えば、どうしてこの時ばかりは、出不精の自分が参加しようなんて思ったのか不思議でならない。面倒くさがりの僕にとって、新幹線で2時間の距離は億劫で仕方なかったはずなのに。
そう考えるとこの頃にはもう、僕はあれに誘われていたのかもしれない。
夏祭り 耳塚 @january1189
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