勝手に古畑任三郎の台本書いてみた

順風亭ういろ

第5024話

古畑任三郎#1054


古畑任三郎 ・・・田村正和

今泉慎太郎 ・・・西村まさ彦


映画監督 笠原やすのり  ・・・仲野太賀

プロデューサー檜山道子 ・・・片桐はいり

えなこ ・・・えなこ


●黒バックに古畑が立っている

古畑「え~、編集の技術というのは日々進化しておりまして、昔はフィルムをつなげ合わせたりなんかしていたみたいですが、最近じゃパソコンやスマホで一般人でも映像を簡単に編集できるようになったようです。私も編集で消したい人や過去はいっぱありますけど、現実は編集できません」

♪でんでんでんでで~


●工場廃墟のようなところ(映画スタジオ)

電話しながら廊下を歩いている檜山

檜山「あ、そうそうマスター、初恋予約しておくわ。多分23時くらいに行くと思うから」


-檜山が扉を開けると笠原が何かを撮影している。


檜山「まだ、かかりそうかしら?」

笠原「あれ、檜山さん。珍しいすね現場に来るの」

檜山「ひとり?」

笠原「あと、風景だけ取りたかったんで残ってました」


-カメラを構えている笠原。笠原が撮影している工場廃墟の風景。その風景に画角に入ってくる檜山。おもむろに台本を取り出し、燃やして投げ捨てる。


笠原「ちょっと、なにしてるんですか」

檜山「もうこの映画もおしまいよ。撮影中止よ、私の権限で」

笠原「なんでなんすか?」

檜山「これよ」スマホでネットニュースをみせる「新進気鋭の笠原監督とグラビアアイドルえなこの熱愛発覚」の記事


檜山「二股じゃない。ふたまた!」

笠原「あ、あ~そうですか」

檜山「認めるのね。この映画のお金、引っ張て来たの誰?私よね?返してもらうから。慰謝料も、この際もらうから」

笠原「あ、ちょっと、待ってください。それは」

檜山「それだけ言いに来ただけだから、帰るわね」

笠原「あ、ちょっと、誤解ですって」


-足元に撮影用に用意していた実物のナイフがあり、それを持ち、檜山を刺してしまう笠原。

笠原「あっあっ」とうろたえるも、檜山を自分の車に運び、檜山の家へ向かう。


●檜山のマンション

檜山のマンションの監視カメラに映ったり、住人とすれ違うも笠原が「ほら、酔っぱらって」とごまかし檜山のカバンから鍵をとり、家に入り、床に檜山の死体を転がす。とりあえず触ってしまったところを家にあったタオルでふきとり、持って帰る笠原。


-胸にナイフがささったまま仰向けに死んでいる檜山。


●パトカーや警察がたくさん集まっている檜山のマンション

-セリーヌの自転車に乗ってやってくる古畑。

古畑がマンションの部屋に入ると、待っていた今泉。


今泉「あ、古畑さん、どうやら自殺みたいですよ」

古畑「自殺ねぇ。ずいぶんお洒落な格好で自殺してるね」

今泉「普段からお洒落なんじゃないですか」

古畑「これから自殺する人間がお洒落なんかする?」

今泉「え?じゃ他殺ですか?」

古畑「ん~自殺であんまり胸にナイフ刺さないでしょう。大体手首とかじゃない」

今泉「え?胸もあると思いますけどね。こうひと思いにぐさーって」

古畑「(周りの匂いを嗅いで)あれ、なんか変な匂いしない?」

今泉「死体がありますから」

古畑「いや、そうじゃなくて」

警察官A「あの、古畑さん、監視カメラに被害者とみられる映像があったようです。近隣の住民もずいぶん酔っぱらった被害者を見たという目撃情報も」



●マンション管理室

-映像を見ている古畑と今泉

今泉「あ、この男みた事ある。えなこちゃんと付き合ってる奴だ」

古畑「君、知ってるの?」

今泉「たしか映画監督ですよ。くっそーえなこちゃんを」

古畑「ふ~ん」


●映画スタジオ、スタッフが慌しくしている。

今泉「うわぁ、僕、映画撮影はじめて。活気がありますね。古畑さん。あ、あの人、夏木マリですよ」

古畑「はしゃぐんじゃないよ。みっともない。どうも~んふふふ。あの、すいません、監督はどちらに?」

スタッフ「監督っすか。あっちでカメラチェックしてますよ」

古畑「どうも、ありがとうございます。行くぞ、今泉」


-今撮影したと思われる、映像を見ている笠原。机に栄養ドリンクの空瓶。

笠原「あれえ、シーンがつながらないかも、ごめん、もう一回やろうか」と周りのスタッフに言っている。

古畑「あの、監督ちょっとよろしいですか?」

笠原「はい?忙しいんで、後にしてもらえます」

古畑「あの、実はわたくし、こういもんでして(警察手帳を見せる)、お時間とらせませんので、2,3質問よろしいですか?」


-笠原、警察手帳を見て、愕然とする。


古畑「あの、2、3ご質問を」

笠原「あ、はい。2、3なら」

古畑「昨夜なんですが、何されてました」

笠原「昨夜は~、風景の撮影してましたね。そのあと、ちょっと飲み行って帰りましたけど」

古畑「飲み、と言いますと?」

笠原「ああ、いきつけのバーがあるんですよ。」

古畑「へぇ~行きつけの。いいですねぇ」

笠原「あの、なにかあったんすか?」

古畑「あれ、ご存じない?昨夜亡くなったんですよ、プロデューサーの檜山さん」

笠原「え?檜山さんが。そうですか、良くしてもらってたんです。昨日も一緒に飲んでたんすよ。ずいぶん酔っぱらちゃって。そっか檜山さん亡くなったんだ」

古畑「え~お察しします。ナイフを使って、おそらく自殺じゃないかと」

笠原「あ~あのネットニュースの事で悩んでたみたいっすよ」

古畑「それは~大変だ。スキャンダルとプロュ―サー亡くなったんじゃ、映画も撮影できないでしょう?」

笠原「今の所、自分は撮影しかないんで。あの、もう行かないと」

古畑「あ、最後に、香水はいつもつけてます?」

笠原「ええ、撮影の時は気合いれるためにいつもつけてんすよ」

古畑「お忙しいところ、どうもありがとうございました」


-忙しそうに、スタッフに声をかける笠原。

その様子を見ている古畑。


古畑「今泉君、君、香水とかつける?」

今泉「え?つけるわけないじゃないすか」

古畑「だよねぇ」

今泉「あれ、てことは、犯人あいつっすか」

古畑「まだわかんないけどね」


-栄養ドリンクを手にもって、今泉に渡す古畑。


●スタッフがいなくなった後の映画スタジオ。廃墟みたいなところ(檜山が殺害された場所)

-笠原が一人で撮影している。


古畑「あれぇ、まだいらっしゃたんですね。スタッフの方ほとんど帰りましたよ」

笠原「ああ、古畑さん。そちらこそ、まだいたんですか?」

古畑「いやぁ、映画スタジオなんて初めてなもんですから、ちょっと見学していこうと思いまして」

笠原「映画、お好きなんですか?」

古畑「いいえ。最後に観たのが~、ええと。吉原の西川峰子のやつ。なんて言いましたっけぇ…」

笠原「吉原炎上?」

古畑「そうだ。吉原炎上。さすが映画にお詳しい」

笠原「相当、古いっすね」


-下を見てなにかに気づく古畑


古畑「おや、何か落ちてる」

笠原「どうしました?」

古畑「いえね。ここでボヤ騒ぎか何かありました?それとも、撮影で火を使ったとか?」

笠原「(動揺しながら)いえ、火は使ってないすけど。ボヤも聞いたことありません」

古畑「え?そうなんですか?おかしぃいな、なにかの燃えカスを拾ったんですよ、私」

笠原「え?燃えカス?誰か、隠れてタバコ吸ったのかも。ここから喫煙所まで遠いんすよ」

古畑「あ、たしかに。でも、こんな大きい燃えカス出るかな」

笠原「ちょっと見せてください」


-3分の1くらい残っていた燃やされた台本が落ちている。


笠原「うわ、ちょっとこれはひどいな。いるんすよ、時々、スタッフの中で恨んでいたずらする奴が」

古畑「そういうものなんですか?しかし、ひどいやつがいたもんですね、今回の台本ですよ」

笠原「これはちょっと、注意しないといけませんね」

古畑「なにやってんだ、てめぇコラ!とかですか?」

笠原「古いタイプの監督すね。今、それやったらパワハラですよ」

古畑「んふふふ、そうですか」

笠原「それじゃ、今日の分の撮影終わったんで僕はそろそろ失礼します」

古畑「ちょっと最後にお聞きしてもよろしいですか?」

笠原「なんですか?明日も撮影なんすよ」

古畑「檜山さんのスマホから最後の通話で留守電がバーのマスターへの電話で入ってたんです」

笠原「へぇ、そうんなんですね。それがなにか?」

古畑「いえね、内容的には大したことはないんですが、23時に初恋予約しておくわ。とだけ、言い残してて、気になっちゃいまして。笠原さんならこの意味わかるかと」

笠原「自殺前に初恋を思い出したんじゃないかな」

古畑「ふふふふ。さすが映画監督でいらっしゃる。ロマンチックですね」

笠原「いや、あの人、結構そういうとこ、あるんですよ」


●残っているスタッフのいる編集室

今泉「あ、古畑さん。やっぱり何も映ってませんよ。ずっと風景のままです」

古畑「おかしいな。昨日撮影してた映像に、ボヤ騒ぎが映ってるはずなんだけど」

スタッフ「ボヤ騒ぎなんかあったんですか?」

古畑「あら、ご存じない?」

今泉「この人、ちょっとおかしいんですよ」

-今泉のデコをはたく古畑


●笠原の行きつけのバー

-笠原とマスターと何か話していると、店のドアが開き、古畑が入ってくる。


古畑「おや、奇遇ですね。私もちょっとの飲んで帰ろうかと思ったら、笠原さん」

笠原「絶対、嘘でしょ。なんで俺をそんな疑ってるんですか?」

古畑「疑ってなんかいませんよ。わたし、ちょっと飲みにきただけです」

マスター「はい、初恋もう一杯」

笠原「ありがと」

古畑「マスター今、なんて言いました?」

マスター「え、初恋。こいついつもカルピスサワーのこと初恋って注文してたもんですから、もうカルピスサワーの事、初恋になっちゃたんすよ。うちの店では」

古畑「なんだ笠原さん。人が悪い。あなた初恋予約しとくからの意味わかってたんじゃないですか」

笠原「いや、ほんとの意味の初恋としか考えてなかったんですよ。こっちの意味の方はすいません、忘れちゃってました」

古畑「ふふふ」

笠原「なにが可笑しいんですか。自分、檜山さんには相当お世話になってたんすよ」

古畑「あ、これは失礼いたしました」

笠原「じゃあ、僕は明日も早いんで、失礼しますね。マスターお勘定置いとくから」

古畑「おやすみなさい。(笠原が店を出たのを見てから)マスターちょっと」

マスター「なんですか?」

古畑「あの日、檜山さん来られました?」

マスター「予約はされてたんですけどね。来なかったんすよ」

古畑「あ、そう。どうもありがとう」


-古畑振り返って、周りが暗くなり、ピンスポット。


古畑「え~、今回の犯人は非常にわかりやすい人物でした。証拠になるものがたくさんありましたが、決定的な証拠を犯人は残しています。ヒントは編集」

♪テレテレテテ―


●編集室

-1人で座って作業している笠原


古畑「あの、ちょっとよろしいですか?」

笠原「あの、もう、ほんと勘弁してもらえませんか」

古畑「あなた檜山さん殺してますよね」

笠原「え?なにを言うんですか?古畑さん。ほんとそろそろ堪忍袋の緒を緩めますよ」

古畑「それ。もうすでに言われた方います」

笠原「やめてくださいよ。自殺したんすよね、檜山さん。胸にナイフを刺して」

古畑「わたし、ナイフとは言いましたけど、胸に刺したなんて一言も言ってません」

笠原「あ!でも、家で死んでたんでしょ。自分、その時間風景撮影して、バーでしたよ」

古畑「いいや、あなたが檜山さんの家に檜山さんを運んだんです。あなたが風景を撮影している時、檜山さんが現れて、何かいざこざがあったんでしょう。台本を燃やしたのは檜山さんですね」

笠原「古畑さん、待ってください。檜山さんが来たなんてなんでわかるんですか」

古畑「あの日、あなた風景撮影どころか、檜山さんを撮影してましたね」

笠原「なにを。どこにそんな証拠があるんすか」

古畑「私と今泉で確認しました。どこにも檜山さんは映ってません」

笠原「ほらみろ」

古畑「それが、今回の証拠なんです」

笠原「はぁ。何言ってるんだ。あんた」

古畑「あなた、あの映像編集しましたね。ちょうど檜山さんが現れて、台本を燃やし、あなたに刺されるまでの一部始終、時間にして約15分でしょうか。スタッフの方がおっしゃってました。変にこの風景画、途切れてるところがあるって。ならばっさり、風景事、データを消せばよかったじゃありませんか、それをわざわざ、編集してまで残して、なぜです?」

笠原「だって、あの風景ないと、心情出ないでしょう。あれをばっさり落とすなんて、センスのない監督がやる事ですよ。だってそうでしょう。あいつが来なければ、この映画、完成して、全国ロードショーの予定だったんすよ。それをあいつが…」

古畑「‥‥え~、お察しします」



笠原を促す古畑


2人とも編集室を出ていき、誰もいない編集室でエンドロール。

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