詩「祖母の家」

有原野分

祖母の家

ようやく雪が降ったと思ったら

布団のぬくもりは消えていた


がらんどうになった

祖母の家に体温はなく

鬱陶しかった喧しさは

渇いた柱と

懐かしくすらあった


ひとは小さい

大きくなったと思ったら

また小さくなる


そうして帰っていく

昔いたはずであろう場所に


雪が止んだ

庭はまた乾いていく

家は忠犬のように

祖母の帰りを待っている


帰るものを失った空間は

また雪が降る前に

幽かな布団の体温が渇く前に

静かに眠りたい

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詩「祖母の家」 有原野分 @yujiarihara

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