付記・資料など
八軒
『彼方を照らす』について(主に方言解説)
『彼方を照らす』の作中についての付記です。
自主企画の応募要項が一万字までなので、付記を別に分けることにしました。あと他の作品の付記や資料もここにまとめられるから都合いいかなと。
『彼方を照らす』は小説というのも後ろめたい、雰囲気文章の書き連ねなので読む人はあまりいないと思います。そのうえ読む人に優しくない。
作中風に言うと「はぁー。こったらもん読むのゆるぐねぇっけや」
誰がこんなマイナー方言わかるんだって話で。世の市民権得てる方言って結構限られてると思う。
作者は高校まで道南にいましたが、離れて長いのでかなり忘れかけてて「こんなだったべか」と思い出しつつ書いてるので、札幌方面の方言と混ざってしまってるのもクソ。
・翡翠色の浅瀬に紺碧の海。そんな南国カラーの海が北海道にあるの?
→ 積丹ブルーで検索どうぞ。奥尻の海もヤバい。
・エゾカンゾウ
→ 6〜7月上旬くらいに、少しオレンジぽい黄色の花を咲かせるユリに似た植物。ちなみにこれを書くのに名前を調べるまで、俺は野っ原とか海岸とかに群れて咲いてるこの花がユリだと思ってた。全然ユリとは種から違う。道民、カンゾウのことユリと区別ついてない説。道外では山にあるっぽい?ので多分区別ついてる。
ちなみに北海道は桜と梅が一緒に咲くから、道民はこれも割と区別ついてない。たぶん。
・やんや
→ 特に道南で使われるが、他でも使われる。非常に翻訳しにくい単語。
うわ!、ええっ、いやいやww、おおっ、はぁっ?!、んな?!、クソッ、あああwww、みたいな感嘆詞ですかね。ポジティブな意味でもネガティブな意味でも何かにつけて雑に使われる。
・あれ見れ
→ 誤字じゃないです。これは北海道全般だと思うけど、命令形が「〜れ」になることが多い。「寝れ」とか。
・あやつけて
→ かっこつけて
・なまら / がっつり / わや
→ まぁこれは有名かと。とても、みたいな意味ですが、札幌の方はがっつ系よりなまら系。道南だとがっつ系が雑に使われる印象。
あと、わやはネガティブ、なまらとがっつ系はポジティブネガティブ双方で使われるので全く同じ意味というわけではない。
説明しにくいのですが(多分俺もうまく自覚してない)がっつ系は適応範囲が広いのに対して、なまらは中間、わやは(ネガティブな)状況に対して使われる感じ。
勉強してきた?って聞かれて「がっつり」(とてもしてきた)とだけ答えるのはしっくり感があるが、「なまら」だと違和感がある。俺が道南育ちだからもしれないが。雪が「がっつ降ってる」「なまら降ってる」これはどっちもおけ。「なんまらでかい芋」とは言うが、「がっつしでかい芋」とは言わない。
がっつ系は動詞にかかることが多いんかな。
だから勉強してきた? にたいして「がっつり」だけで文章が成立するのもそう。がっつり自体に ”その行為をして来た” ニュアンスがある。続く動詞が隠されてるっていうか。
車が凹んだのを見て「やんや、がっつしいったわ」とは言うが「なまらいった」とは言わない(俺は)
芋の例だと「がっつしでかい芋」は違和感あるが「がっつり育った芋」だと違和感ない。芋ちゃん頑張って育ったね〜って感じ。
・トド
→ ロシアから来たんか? 基本的には奴らは冬にくる。数日前におたる水族館のトドがバズってたが、このシーンはバズの前にもう書いてたから関係ない。ぜんぶ北海道が悪い。
・大間崎のプラカードは見えるし
→ 北海道と本州の距離が近くなるところの本州側のところ。多分市民団体が「北海道を返せ」とか「わたしたちは待っている」とかプラカードあげてるんでしょう。
・衛星放送も受信できる。データはハンドシェイクができねぇから宇宙通信を応用した一方向通(作中ではここで切れてる。一方向通信)
→ こっちからあっちは見えてるし、電波とかもくるけど、向こうからは無に見えてて、海底ケーブルや動物の行き来は閉ざされてる感じ。光子だけ一方通行可能なんでしょうか知らんけど。SF 的な設定を詰められると死ぬ。
通常のインターネットなどのデータ通信は、受信であっても双方向にやりとりしてます(ハンドシェイク)いまいくぞー、どうぞ、みたいな。
一方通行だとこれが不可能なので、通常のプロトコル(通信のやり方)は使えなくなります。宇宙空間では距離がクソデカすぎて遅延がすごいので、ハンドシェイクの頻度を極めて落としても通信ができるようなプロトコルを使います。
このような技術を応用すれば、大容量データを作中の北海道に送ることも可能でしょう。ただ、外部からは北海道の存在さえ疑われているので「北海道にゲームのデータを送り続ける会」とかがやってるのかも。
文字数の都合で削られたんですが、石狩のデータセンターを巡ってレジスタンス的なやつと反異能派でなんかする話もあった(というか最初はそっち系の話を考えてた)
・彼女はおもむろに腕を上げて
→ 近年浸透してきた方の意味ではなく、本来の「自然にゆっくりと」の意味のおもむろです。なので敢えて漢字を開かないで使ったが、正反対の方の意味が広がりすぎなんだよぉ。
・彼女は始めての雷鳴を聞いた
→ エゾカンゾウの時期はとうに過ぎとあるので、恐らく7月下旬から8月上旬でしょう。北海道は梅雨がほぼなく、5〜7月上旬は一年でもっとも晴れが多く降水量も少ない季節です。なので、そもそも雷雨の機会というのがとても少ない。あっても8月付近にほぼ集中する感じじゃないかなぁ? なので、恐らく6月生まれである彼女が初めての雷鳴を聞いたのが8月になってもなんの違和感もない。北海道なら。
・親が反ノウ気味だっさ
→ っさ は多分道南方面で使われる特にこれといって意味のない語尾。だっさーと伸ばすニュアンスだが、10000字に収めるにあたって横棒が削られてしまった。
・最後のスマホ / チトセのらぴだすではさぷらいが途絶えてハンドータイがなんとか
→ 常識的に考えて、サプライが途絶えて道内だけでスマホ作れる資源はないだろ。知らんけど。なので半導体危機になってる。作中では千歳のラピダスの工場が完成してから断絶があったらしい。せめてもの慈悲。技術者もレアメタルも足りんけどな。
・オヤジの黒歴史小説
→ アキのオヤジさんの適応力はそういうことか。断絶後の道内では娯楽が減ってるので、また書こうと思ってるらしい。
・あれが、デネブ、アルタイル、ベガ
→ 元ネタは化物語。アニメの放映は 2009。ツノのヒト(始祖)は人間時代リアタイで化物語を視聴していて、現実のラピダスの工場は建設中なので、それから二十年とすると……
・オリオンやシリウスは冬の星座では? なんで夏の星が初日の出で登るの?
→ 冬の星は夏の朝に登ってきます。
逆に夏の星は真冬には日没と共に沈み、夜明けと共に登ってきます。(冬の夜は長いので、その間に天を半周してしまう)なので、初日の出のシーンでは夏の星が出てくるわけです。明記はしてないですが、初日の出に先駆けて登ったのはデネブやベガでしょう。
夏の日の出と共に登るシリウスは緯度で時期が変わり、首都圏だと多分 7月下旬。北海道だと 8/10 前後です。つまり執筆中でした。
・島には長い冬と短い夏だけがあって
→ 金カムでもそんなシーンあったな。第一話だったかかなり序盤の方で。わりと道民は思ってることではないだろうか。
・マヅメ
→ 方言ってより浜言葉? 釣り用語? 日の出日の入りの前後の時間帯のこと。
・少し溶けてはみたもののすぐに凍ってまた積み重なりすると
→ クソの極み。
・けあらし
→ 冷えた朝方に、水温と気温の差によって海面からもうもうと霧がでる現象。方言なのかはわからん。
・オリオンとシリウスを結んだ横をかすめる淡いもや
→ ここの天の川は相当条件良くないと肉眼じゃ見えない。
・シリウスも、数ある星の一つでしかなかった
→ 冬は明るい星が多い。水蒸気が少なくて晴れたなら星がよく見えるせいもある。
・雪庇
→ 屋根とか崖とかにできる、ほうっておくと下を通った人が死にかねないやつ。雪山とかで知らずに上を通っても落ちて死ぬか埋まる。屋根のやつは致命傷になる前に落とそうな。屋根のやつは極限まで放っておくと地面につくから逆に安全?になる(クソ)
・流木やら廃屋の残骸やら
→ 基本的に道民は海に来たら火を焚きます。大事なことなのでもう一度いいます、海に来たら火を焚きます。そして時間があるならキャンプをします。海水浴はキャンプ。
条例がなんとかとかそういうのは本州の話です。こっちにはこっちのルールがあるのです。道民は焚き火好き多いと思う。Twitter で海 焚き火とか検索すると高確率で道民がかかる。
で、俺らが若い頃は炭(主にジンギスカンのため。駒ヶ岳ってかいてる箱に入ってる)は持ってくことはあっても、薪とかハイソなものは持っていくことはありませんでした。大体そこに転がってるものを燃やしてた。辺鄙な浜には流木や原型を残してない家だった何かがあったりして、みんなそれを剥いで燃やしてた。ハンドアックスとかハイソなものは持っていかないので極真やってる奴が蹴りで割ってたな。
今はキャンプブームで焚き火の御作法があらこれされてすごいですが、作中は隔離世界なのでユルユルだった当時のノリです。
・エゾニュウ
→ 大人の背丈よりでかくなるウドの仲間? 俺らは単にウドって呼んでた。無知だねー。割とどこにでも生えてる。これが枯れると筒状のなんか枝みたいになって、浜とかいくと山とある。筒状で乾きやすいので火もつきやすい。
・みよしの
→ 札幌民のソウルフード。旭川にもある。
・シモリ(沈み瀬)
→ 多分釣り用語? シモリって書いてから通じないかもとおもって、正式名称を調べてシモリはルビにした。水面下にある岩礁のこと。シモリがあると海の色が変わって見えるので、慣れるとその濃淡から水中の地形が把握できるようになる。
付記・資料など 八軒 @neko-nyan-nyan
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