『死神旅行』 死後の世界での後悔の残し方

夜野 夕陽

第1話

 見慣れた光景だった。

 色褪せたソファと毎年同じカレンダー。そこには自分が書いた今月の用事と父と母の仕事について書かれていた。

 俺は座っているイスからカレンダーやソファ、食器棚、テレビなどをぐるりと見渡す。そしてテーブルを挟んで座っている母を見る。


 少し痩せただろうか。表情もどこか暗い。

 昔の記憶の中にある俺の母親は仕事から帰ってきてすぐに晩御飯の準備や学校からのお便りを確認して、寝る前に一緒に遊んでくれる元気な母親だった。

 その明るい性格からか近所の人からも好かれ、よく自宅に野菜やらお菓子が届けられていた。

 俺が何か悪いことをすれば本気で怒って叱ってくれた。そして最後には悪いことをしたのは俺なのにごめんねと言いながら俺の好物のカレーライスを作ってくれた。


 きっと世界で一番料理が上手い母親だった。

 

 しかし母がこのようになってしまった原因を俺は知っている。


 3日前に一人息子である自分が死んでしまったからだ。



「…それで、君はどうしたの?」


 そう母親から尋ねられて体がびくりと跳ねた。

 急に話しかけられたからではない。優しくもどこか他人行儀な口調が聞き慣れなくて怖く感じてしまったからだ。


「えっと……すみません、家に上げていただいて」


 沈黙の時間が作られないように答えになっていない言葉を返した。

 母からの問いかけとこちらの返答が親子の会話ではなく、他人行儀なものになってしまうのも当然だった。


 ――母親は今、俺の事を自分の息子だと認識出来ていないのだ。

 



 仕事からの帰り道で赤信号を携帯を見ながら待っていると、後ろから危ないと大きな声をかけられ顔を上げた瞬間が自分の最後の行動だった。

 顔を上げた瞬間からの記憶がないというのは不幸中の幸いだったかもしれない。きっとその後の自分の姿を覚えていても気持ちの良いものではなかったと思うし。

 …まぁ、自分が死んでいるという事実がある時点で幸いも何もないのだが。

 自分の最後の瞬間は覚えているのだが、それ以外の記憶がどうも薄い。自分が誰のなのかは理解しているが、詳しく思い出そうとすると昨晩見た夢を思い出すように難しい。


 そんな誰かを救った訳でも、自分が何か悪い事をした訳でもない理由で死んでしまった俺がどうして母とテーブルを挟んで座っているのかと言えば、死んだあとに出会った人の話をしなければならない。



「…あぁ、俺死んだのか」



 生前の最後の瞬間から意識を戻した時、少し笑ってしまうくらいに冷静にそう呟いていた。

 死んだ瞬間の恐怖などはなく、死んでしまったという事実だけを受け止めているようだった。

 周りを見渡せば市街地、それも自分の家の前である事が分かった。日が暮れそうな時刻であるというのに人の気配はなく、自然の音も聞こえてこなかった。



「こんにちは」



 どうして死んだのに家の前にいるのか、自分は幽霊にでもなったのかと考えていると後から挨拶された。

 振り返ってみれば真っ黒なスーツを着た若い女性が何も持たず佇んでいた。


「…こんにちは」



 反射的に挨拶を返すとにこりと笑い、3歩こちらに向かって歩いてくる。

 綺麗な人だなと思うだけで、自分の状況について何か知っているかを聞こうとは考えもしなかった。



「会ったばかりですが簡潔にお話したいと思います。あなたは不幸な事故によって死んでしまいここは死後の世界です。そしてあなたには今から旅行を行って頂きます」


「旅行?」


「はい、旅行です。こちらが旅のしおりになります。」



 ポケットから取り出された小さな紙を受け取る。

 2枚の紙がまとめられた薄い冊子の表紙には、可愛らしい丸文字で「旅のしおり」と書かれている。

 表紙を捲れば、箇条書きで何か書かれている。

 1つ目を読もうと紙を少し高く持ち上げると――、



「あ、先にこれも渡しておきますね」



女性が旅のしおりを取り出した逆のポケットから腕時計を取り出すとこちらに差し出してくる。

 銀色に輝く腕時計を受け取り軽く観察してみるが、特徴的な装飾はされていない。

 社会人になる時に初めて腕時計を買った自分には、この時計の良さはあまり分からないのかもしれない。


 しかし文字盤を見てみれば、見た目にはなかった特徴があった。

1から12の数字はなく針も1つしかない。数字も普通の時計の12時の所に300と書かれ、右下には100、左下には200と書かれている。ちょうど3つの数字で文字盤を3等分しているようだった。

 針は300の所で止まっており、軽く振ってみたりしても動きそうにない。



「色々と不思議に思う事もあると思いますが、こちらから言える事だけを伝えさせて頂きますね」


「はぁ…」


「旅行に行って頂くとお話しましたが、今回の旅行先はこちらの家になります。旅行に行く際のルールは先ほどお渡しした旅のしおりに書かれているので、よく読んでください。読んだ上で分からない点があるかもしれませんが、私がお答え出来る事は1つもありません。あなたの解釈で旅行に行ってください」


「…」


「それでは旅行が終わり次第、また会いましょう」



 そう言うと女性はお辞儀をし、歩いて行ってしまった。

 分からない点は自分で考えろというような事言われたが、現状としては分からない点が多すぎてまず何を考えれば良いのか分からない。


 なんとなく自分の家を見て、渡された旅のしおりの表紙を再度捲った。



「『1つ目、旅行の自由時間は5分です。2つ目、旅行先では後悔せずに行動しましょう。3つ目、旅行先の知らない方には礼儀正しくしましょう。4つ目、旅行が終われば元通りです。5つ目、旅行が終わり次第、死神の元へ帰ること』」



 5つの旅のルールを読み終える。

 意味としては理解できる言葉だが、書かれている内容はあまり理解出来たとは思えない。

 そもそも旅行って何だ。それを抜きにしても自由行動5分は短すぎるし、3つ目から5つ目はあまり旅行のルールとしては正しいのか?

最後の死神というのも分からない。ここが死後の世界であるのならばお迎えが来るのだろうか。死神は死ぬときにお迎えが来るもので死んだあとに来るものではないと思うのだが。


 しかし、先ほどの女性は「旅行先は目の前の自分の家」だと話していた。

 その言葉を素直に受け取れば、自分の次にするべき行動は家に帰るという事になる。

 

 自宅の玄関の扉の前に立ち、扉を開こうと手を伸ばした所で気づく。

 今この家には誰かいるのだろうか。

 記憶の中の自宅ならばきっとこの時間帯には母はもう帰宅しているだろう。仕事が忙しい父はまだ仕事をしているはずだ。


 ならばこれから俺は母と会うのだろうか。

 子供の頃から優秀と言う訳ではなく、悪いこともたくさんしてきて最後には親よりも先に死んでしまった親不孝者の俺が。

 母がこの扉の先にいると決まった訳ではないが、なんとなく家の中に人がいる気配があった。


 扉を開けるべきか、自分が母とこの不思議な世界とは言え会う資格があるのか、そんな事を考えていると扉が開いた。


 突然開いた扉に驚いて後ずさりすれば、家の中から1人の女性が少し慌てたような表情をしてこちらを見ている。


 記憶の中にある姿と変わらない、俺の母だった。

 着ている服も、履いている靴も、少し鋭い目元も記憶の中にある母と同じものだった。ここが死んでしまった後の世界という不思議な空間である事を忘れてしまうぐらいに同じ姿だ。



「あ、えっと…」



自分の気持ちの整理が出来ていなかったせいか上手く話せない。

とりあえず、自分が死んでいる自覚はありつつもただいまと言うべきか悩んでいると、母が少し恥ずかしそうに髪を触った。



「人違いしてしまったようで…驚かせてすみません。何か御用でしょうか?」


「ぇ…?」



 母の言葉の意味が分からず思わず聞き返してしまった。

 問いかけされた言葉も、話し方も、こちらの返答がないことに不思議そうに見つめる表情もまるで知らない人に対するものだった。

 

母を怒らせてしまった…それこそ死んでしまった事に対して怒っているのだろうか。

一瞬そんな事を考えてしまうが、変わらずこちらの返答を待つ表情が演技によるものだとは思えなかった。そもそも母は怒っている時にこういった意地悪なことはしてこないはずだ。



「あの…良かったら家上がりますか?」



 変わらず答えない俺にしびれを切らしたのか母が少し微笑みながらそう提案した。



「あ、はい…ありがとうございます」



 母と出会った驚きや、知らない人と話しかけられる不安さを感じながらも俺は母の提案を承諾した。

 母の後を追いリビングを通ると、ダイニングテーブルとイスを指差しながらそこに座ってと言いキッチンへと向かった。


 自宅にまるでお客のように入るという奇妙な感覚を味わいながら、いつも座っていたリビングの扉から一番遠いイスに腰をかけた。

 少ししてお茶の入ったコップを持ってきた母が、俺の対面へと座った。

 お茶を持ってきた際に俺を見て驚いたようにしたのは気のせいだっただろうか。


 ありがとうございますと答えてからリビングをぐるりと見渡す。

見慣れた光景だった。

 色褪せたソファと毎年同じカレンダー。そこには自分が書いた今月の用事と父と母の仕事について書かれていた。

 俺は座っているイスからカレンダーやソファ、食器棚、テレビなどをぐるりと見渡す。そしてテーブルを挟んで座っている母を見る。



「…それで、君はどうしたの?」


「えっと……すみません、家に上げていただいて」


「ううん、それは大丈夫。なんとなく…自分の息子に似ていた気がしたから思わずね」


「っ…」



 思いがけず出た自分の事にどう答えたら良いか分からず俯いた。

 俯くとスーツの女性から貰った腕時計が目に入った。

 先程まで動いていなかった針が動き出している。針は天辺の300から右下の100までの丁度半分の所まで進んでいた。


 旅のしおりに書かれていた言葉を思い出す。

 

『1つ目、旅行の自由時間は5分です。』

 

 もし自分が考えている事が正しいのであれば、母の前で俯いている時間はないだろう。



「…あの、今日は…幾つか聞きたい事があって」


「聞きたい事?」


「はい…その、母親ってやはり大変なんですかね…?」


「…ぷっ、なにそれ」


「…すみません」



 母との会話に時間制限があるとすれば、自分は何を母と話すべきだろうか。

 そんな事をゆっくりと考える事も出来ず思わず口を出た質問に母が小さく笑った。

 だが質問自体を取り消そうとは思わなかった。生前、同じような質問を母にしようと考えていたからだ。


 大学を卒業し、就職した俺は両親から数年は実家から通勤しお金が溜まったら一人暮らしをしなさいと言われていた。

 特に不満もなく言う通りに実家から通勤していたが、母は毎日お弁当を作ってくれていた。コンビニや会社の同期とご飯を食べる事もあるからと最初は断ったが、そういう時は前もって教えてと言うだけで弁当作りを辞めなかった。


 毎朝、まだまだ食べ盛りの男の弁当を作るのは簡単な事ではないと思い、大変じゃないのかと聞こうとした事があった。



「母親かぁ…正直言えば大変かな」


「やっぱ大変なんですね」


「そりゃ言葉の通じない赤ん坊の相手は疲れるし、反抗期になれば接し方に困るし、大人になって悩んでいる子供を見てるとこっちまで悩むし…大変できつい事ばかりだよ」


「…でも、それでも小さい頃は一緒にゲームしてくれて、仕事が忙しいのに毎日ご飯を作ってくれて…」


「――」



 時々考えていた。大変であろう母親というタスクをなぜ嫌な顔を見せずに出来るのかを。

 きっと調べてみれば母としての愛なんて答えが返ってくるだろうが、俺が母になることはこの先ないし経験できても父親としての愛だろう。

 父の愛より母の愛の方が強いなんて言葉も聞いた事があるが、事実は分からない。


 違う。俺が分からなかったのは親の愛についてではなく――、



「どうすれば両親に恩返しが出来るでしょうか」


「…」



 母親が大変かどうかを聞きたかったのは事実だが、きっとその質問の本質は別のものだった。


 きっと俺は普通の家庭に生まれた。普通に対する考え方は人それぞれだろうが、学校に通わせてくれて、ご飯を作ってくれて…欲しかったゲームを買ってもらえずに喧嘩した事もあったけれど、恵まれた家庭に生まれたと思う。

 母も気さくで明るい性格だったから、友達とは違うけれど話しやすく仲のいい親子だったと思う。


 だからこそ自分の中にある普通とは離れた母の愛に対する恩返しの方法が分からないのだ。



「うちにも息子がいたの。優しくて私みたいな母でも慕ってくれるような立派な息子が」


「――」


「カレンダー…再来週の土曜日に書いてあるでしょう?息子の1人暮らしのための引っ越しの日だったの」


「――」


「その前に亡くなってしまったけれど…時々、考えるの。1人暮らししていたらどうなっていたかなって」


「――」


「料理が苦手だから冷凍しておけるおかず作ってあげようかなとか、洗濯とか部屋の掃除とかもきっと最低限の事しかしないから手伝った方が良いかなとか…」


「――」


「作っていたおかずとか掃除とかが彼女が出来たからもう要らないって言われて…そうやって少し会う回数が少なくなって…嬉しくて寂しくて悔しくなるのかなって」


「…悔しい、ですか?」


「うーん…例えばご飯を作ってって言う相手が私じゃなくて未来の奥さんになったり、息子は虫が苦手だったから虫退治も私か夫だったのが変わっていって…そういう小さなことをやってあげられるのが私じゃなくなるのが、嬉しくて寂しくて…少しだけ悔しいだろうなって」



 少し曖昧だった昔の自分を思い出す。

 料理はあまりした事がないし、虫は大人になっても…いや大人になるにつれて苦手になったような気がする。特に足が長い虫は苦手だった。


 亡くなってしまった息子の事を話す母さんは、心の底から楽しそうに話を続けた。



「でもきっとそれで良いんだろうなって思うの。そうやって離れて元気にする子供を見て…大変だった、けど楽しかったねって夫と話せると思うから」


「…何か俺に…息子さんにしてもらいたい事はないんですか」


「ちょっとだけ孫の顔は見たいって思うけど…元気で居てくれればそれでいい…本当にそれだけで…良かったの」



 その答えだって予想は出来ていた。自分の子供が元気で居てくれれば良いと。

 生前の俺は母さんならそう言うと知っていたから、1人暮らししても時々顔を見せたいと思いつつもそのうち面倒くさくなって行かなくなるだろうなとも思っていた。


 もし仕事が大変なら少しだけ仕送り出来るかもしれないし、美味しいごはんに連れて行く事だってあっただろう。


 けれど、死んでしまった俺には元気で居てくれるだけで良いという願いも叶えてあげる事は出来ない。絶対に、出来ないのだ。



「――」


「そうね…それと時々でいいからありがとうって言ってくれたらお母さんとしては大満足かも」


「――」



 そう言われて、ふと顔を上げ母さんと目を合わせる。


 お互いひどい顔だったと思う。


 いつから出ているか分からない涙と鼻水にまみれ、目元も赤く腫れている。


 ティッシュを取りに行く時間さえ惜しいかのように動かずに。


 そんなひどい有様だったが、母さんは俺から目を逸らすことはしなかった。


 多分、最初から。


 知らない他人であるはずの俺から目を逸らさずに。


 俺は目を逸らしていたというのに。


 その事実に気づいて俺はまた顔を落とした。

 そして目に入った時計の針は200と300の間を指している。

 残り1分もない。



「…中学生の頃、ご飯美味しくないって言ってごめんなさい」


「――」


「…高校生の頃、話さなくなってごめん。母さんともっと話しておけばよかった」


「――」


「大学生の頃、朝方に帰るようになってごめん。たくさん心配かけたと思う。けど大学生の頃の友達とは今も仲良くしているよ」


「――」


「社会人になってから、恩返し出来てなくてごめんね。仕事に慣れるのが少し大変で…いつか美味しいご飯を3人で食べに行こう」


「――」


「孫を見せるとか…元気でいることはもう無理だけど…」


「――」



 遅すぎた恩返しとして自分に出来ること。

 この不思議な世界でしなければいけないことがあるのならば。


 おそらくもう時間は10秒もない。もしかしたらすでに時間は過ぎていて、涙の先の母さんはいないかもしれない。

 それでも――、



「それから…」


「――」




「――ありがとう、母さん」




「――」


「母さんが…あなたが母親で幸せだった」


「――」



 母さんが目を瞑った。

 一度も目を逸らさなかった母さんが目を瞑った。


 伝えたいことと伝えなければならない事は言えたと思う。

 母さんがどう思っているかを知ることは出来ないけれど。


 それでも自分の母親は応えてくれるだろうと信じて目を逸らさずに待つ。


 涙を流した母さんが俺と目を合わせて口を開いた。



「――こっちこそありがとう、■■■」



 母の愛というのは自分では理解出来ないものと思っていた。


 けれど、最後に呼ばれた自分の名前にはそれが目一杯込められている気がした。












「おかえりなさい、■■■さん」


「…」



 気づけば家の前に立っていた。

 視界が急に変わった事に驚きつつも、冷静になるのは早かった。



「…自由行動は5分」


「はい、旅行はこれで終わりになります」



 振り返れば真っ黒なスーツを着た女性が立っている。

 母に会う前に出会い、旅のしおりや腕時計をくれた女性だった。



「後悔はありませんか?」


「…たくさんあります」


「…」


「けど…これでよかったかなとも思います」


「…そうですか。では旅のしおりを返して頂けますか」


「あ…」



 返して欲しいと言われた旅のしおりを確認すれば、手の中でくしゃくしゃにまとめられていた。

 丁度いい大きさだしこのまま投げれば遠くのごみ箱に入りそうだなと思い、手を開いて見せれば彼女は少し笑って旅のしおりを取った。



「まぁ丁度良いって事にしておきます。では新しい旅のしおりを■■■さんが、書いてください」


「俺が?」


「はい、■■■さんが、です」



 やけに強調された自分の名前に思わずなるほどと呟いた。

 どうやら死神という仕事にも上下関係はあって、先輩から後輩へ受け継がれていくものらしい。



「では、私は先に」



 にこりと微笑んだ彼女は真っ白な冊子とペンを俺に渡した。

 社会人になってから聞くようになったその言葉と、解放されたような笑顔を見て思わず聞いてしまった。



「次はどんな人になりたいんですか?」


「私も■■■さんと同じでたくさい後悔がありますから…同じようになりたいですね」


「ちなみにそっから先は運なんですかね?」


「らしいですよ。では、お疲れ様でした」



 そう言って彼女は俺に背を向けて歩き出した。

 自然とお疲れ様でしたと返せる自分も大人になったなと感じる。



「名前ぐらい聞いておけばよかったかな」



 もう1つだけ後悔が増えた所で、彼女から貰った冊子とペンを見つめる。

 何の変哲もない紙とペンだったが、何かを書くには十分な代物だ。


 腕時計の針が天辺で止まっている事を確認してペンを滑らせた。










死神旅行 旅のしおり


旅のルール


1つ目、旅行の自由時間は5分です。

2つ目、旅行先では後悔せずに行動しましょう。

3つ目、旅行先の知らない方には礼儀正しくしましょう。

4つ目、旅行が終われば元通りです。

5つ目、旅行が終わり次第、死神の元へ帰ること

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