第40話 綿本おふとん『ハッピー障害児ガールズ』

今日ひさしぶりに綿本おふとん先生の読み切り漫画『キャロット通信の崩壊』を読んだ。

これは29歳で文芸サークルを主催してる女性たちの葛藤を描いた物語で、人に読まれない小説を書くことのむなしさや切なさや悲しさ、命の瀬戸際に追い込まれたとき感じる文学の頼りなさ。それでも小説を(文学を)書かずにいられない切実なさびしさを、これほど雄弁に描いた作品は文学にも漫画にもほとんどない。

要するにたいへんな傑作だが、今日になって綿本先生がツイッターをやっているのを知り、そこで先生が『ハッピー障害児ガールズ』というシリーズ漫画を描いていると知った。



これはアイドルを目指す三人の少女の物語だ。

そういえば『推しの子』が先週最終回だったな……と思いながら読み始めてすぐガンッ! と頭をぶん殴られるような衝撃を受けた。


三人の少女は全員障碍者で、一人は全盲、一人は手足がなく、一人は知能が足りない。

全盲の子が作曲の才能があり、手足がない子はアジテーターとして異様な才能を持つ。

以下は手足のない子の台詞。


「代わりに私は 君の代わりに世界を見てあげられるし

 ぱー子の代わりに考えてあげる」


これは推しの子に出てきそうないい台詞だ。

互いを補い合うのはアイドルグループの基本だろう。

しかし以下の台詞は異様だ。


手足がない子はテレビでアイドルに出会う。

やはり『推しの子』に病弱な女の子がテレビでアイを見てアイドルに目覚める場面がある。

手足がない子も彼女のアイドルに出会う。

とんでもないアイドルに。


「手がないからピアニストにはなれないし

 足がないから陸上選手になれない」


「でも もしかしたら象徴アイドルにはなれるかもしれない」


彼女のアイドルは天皇なのだ。

そして女の子は「天皇になりたい」と思う。


体が不自由な女の子らしい妄想と笑う人もいるだろう。

しかし物語は「この方向」に向かって、おそろしい熱量と説得力と速度を持って突き進む。

とにかく作品のカロリーが高いからまだ一巻しか読んでいないが、この作品についてはいずれきちんとレビューを書く。

『キャロット通信の崩壊』はトーチwebで

『ハッピー障害児ガールズ』はキンドルでいずれも無料で読める。

ぜひお読みください。


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サンデーパンチ 森新児 @morisinji

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