暇潰しの怪談話。2

 しかし、次第に此方の話のネタが尽きてくる。

 だが、未だに利用者は期待の眼差しを向けてきていた。

 私は再び考え込んでから、先程までと趣向を変えて、怖い話に内容を変えて話をしだした。勿論、話したのは小説の内容である。やや身振りや手振りを加えつつ、臨場感が伝わる様にしていき、ー

 「…と、…これは、私が作成した話です。」

 と、言って話を締めくくった。

 すると周りから「…なんだ、作り話かよ」と、利用者の何人かが指摘し、微かに笑いだした。

 そうして、辺りが和やかな雰囲気となった。ーー


 ウーウー!


 しかし、その直後に突然、部屋の隅から玩具の音が鳴り響く。

 その場の全員が振り向いて、視線を向けた。

 そこには、玩具の棚がある。人形やらが山積みにされている。

 その玩具は、所謂は知育用の玩具である。働く車のボタンを押すと、同じ車のサイレンが鳴るものである。因みに音は、パトカーだ。前に貰い物で取引先から頂いて、利用者が遊んでいたりするのだ。

 だが、その時は棚の側には、誰もいない。

 何故なら、私を含めて利用者も、ずっと同じテーブルを囲んでいたままだからだ。

 やがて今度は、時計のチャイムが鳴りだし、休み時間を知らせる。

 それが終わると、同時に玩具の音も止まっていた。

 暫くの間だけ、私たちは全員が首を捻って、動けなくなっている。

 

 

 そして、あれから音が鳴り出す事もない。

 何故に、音がひとりでに鳴ったのかは、誰もわからないままだった。



 ※これは、実際にあった話です。

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暇潰しの怪談話。 あおいろ @aoiroro

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