ヒロインみーんな彼氏持ち!?なラブコメ〜〜〜俺を助けたセクシーギャルも、俺と結婚を誓った美少女幼馴染も、俺の下駄箱に手紙をいれた童顔ツインテール女子も、もれなくみんな彼氏がいる……
第32話 男女の友情を問うた時点で、友情としては終わっている
第32話 男女の友情を問うた時点で、友情としては終わっている
一刻も早くあの人がいる空間から離れたくて、重たいドレスの裾を握りながら、必死で階段を駆け下りた。
「──待ってよ清忠!」
不意にぐいっと腕が引かれ、俺は振り返る。そこにいたのは、必死に俺の腕にしがみつく双葉の姿。
「はぁ……はぁ……清忠……大丈夫?」
「えぇっ、と……そっちこそ大丈夫?」
走って追いかけてきたのか、双葉はかなり息が上がっており、今にも死にそうな顔をしている。
「だ……だいじょーぶ、だいじょーぶ……はぁ……はぁ……と、とりあえず……ここじゃ何だし……外で……話そっか」
「お、おう」
※
レンタルしたドレスを返す前に、俺は売店で『HAKODATE LOVE♡』と書かれたTシャツを購入し、それを制服のズボンと合わせて女装を解除した。Tシャツはもちろん双葉セレクトである。……日本大好きな外国人かよ。
「も〜。急に走り出したらびっくりするじゃん」
「ご、ごめん」
「あ~あ。もっとドレス着てたかったのにな~」
そう言いつつ、冗談っぽく笑う双葉を見ると、俺も少し落ち着いてきた。
「……ねえ。さっき写真撮ってくれてた女の子、知り合いなの?」
「知り合い……まあ、そうだな」
互いが互いを認知している関係性を知り合いとするならば、俺とあの人は間違いなく知り合いだ。――忘れたいし、忘れられてしまいたい人だけれど。
「ふーん」
絶対詮索されると思ったのに、双葉はそれ以上何も尋ねなかった。
「えっと……聞かないのか?」
耐えきれず、俺が逆に尋ねてしまう。
「だって、顔見ればなんとなくわかるもん。……あたしも、何度も見た顔だから」
『あたしも』という言葉に、疑問はなかった。俺もかつて、あの人を双葉に重ねたから。
きっと彼女は、俺が告白した世界線の双葉つぐで――彼女たちにとって俺の苦悩は、何も特別じゃない、ありふれたもの。
「……もしも俺が気持ちを隠し続けられたら、ずっと友だちでいられたのかな」
あの日告白しなければ、今頃俺たちまけくど最新刊の話題で盛り上がって――ううん、そうじゃないな。
俺がその繋がりに、友だち以上の何かを願った時。そこできっと、俺たちの友情は、終わっていたんだ。
「──あたしたちみたいな女の子はね、周りによりかからなきゃ、生きられないんだ」
そう語る双葉の声は、寂しげな響きを帯びていた。
「一人で生きるのが怖くて。誰かに依存するのも怖くて。だから結局、いろんな人にすがって、傷つけるの。友情も、恋愛も、利害の一致の延長に過ぎないのに。それを都合良く利用して、壊しちゃうんだ」
「……そっか」
彼方くんの一件で、俺はそれをよく知っている。そして俺は、その都合の良い関係を、心地良いと感じてしまったのだ。
「清忠はさ、私と初めて会った時のこと覚えてる?」
「……忘れるわけがないだろ」
あんな最低の告白を。
「まあ、ちょっと失礼だったかなって反省はしてる」
「それは何よりです」
初対面の相手に2番目の男になることを求めるのは、ちょっとどころじゃなく失礼だけどな。
「でもさ、やっぱり男女の友情って、成立しないんだよね」
「そう、なのか?」
「うん。だってさ、片方が好きになったら、対等な関係じゃなくなるんだよ? そんなの……友だちなんて呼べないよ」
俺と双葉も?、と俺が問うまでもなく。彼女は答えていた
「あたしと清忠もそう。あたしが告白して、清忠は振ったんだもん。全然対等じゃないよ」
「けど双葉には彼方くんが――」
「そうだよ。あたしは誰よりも光琉が好き。その気持ちに嘘はない」
「それなら……」
「でもね、あたしは清忠を誰かに取られるのも嫌なの。彼氏も達だちも独り占めしたい。へへ、わがままでしょ?」
たしかにわがままで、とんでもなく自己中だ。ちょっと得意げなのが信じられない。
「でもね。そんなあたしが、あたしは大好きなの」
「まあ……それは知ってた」
「そう。だから清忠もさ。もっと自分勝手に生きて良いと思うんだ」
「自分勝手に……」
「うん。自分は悪くないって開き直るとか。振った女を憎むとかさ」
決して褒められた生き方じゃないとは思う。でも、たしかに一理はある。
自分を責めたって、誰かの役に立つわけじゃない。それならば、少しでも自分が明るくいられる道を選ぶ方が、ずっと健全で、合理的だ。
「ありがとう双葉。少し気持ちの整理がついた」
「それはよかった~。んじゃ、そろそろ戻ろっか~。次はみんなで五稜郭行こ~」
「だな」
新選組とマジカルフロッピーのコラボは絶対に外せない。一応女装も解けたしね。
「……ねえ、清忠」
「ん?」
「――清忠は振られたかもしれないけど。そんな清忠に振られた女の子もいるってこと、忘れないでね」
彼女の切なげな表情の真意を、俺は測ることができなかった。
ヒロインみーんな彼氏持ち!?なラブコメ〜〜〜俺を助けたセクシーギャルも、俺と結婚を誓った美少女幼馴染も、俺の下駄箱に手紙をいれた童顔ツインテール女子も、もれなくみんな彼氏がいる…… 薬味たひち @yakumitahichi
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