現代怪奇宅部 ~いわく湧くトコロ~

溝浦泰弥

1.背信者 A

1: ★しいな★ 2024/08/13(火) 01:23:03 ID:am83hgkva

朝日みもり顔ばれ

25:45〜


2: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:29:16 ID:ksbv83ys1

リンク貼れや


3: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:32:09 ID:936hfkwh3

ググれば普通に出るよ


4: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:33:19 ID:afjeh16dzl

>>3 ポイポイの凸配信のやつ?


5: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:34:38 ID:936hfkwh3

>>4 自分で調べろks


6: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:34:59 ID:ki74npsp2

>>1 そもそもリンク貼ってない無能


7: ★しいな★ 2024/08/13(火) 01:36:25 ID:am83hgkva

すまん、さっきから試してるんだけど何故か投稿するとURLが消える

動画は確実にあるんだけど


8: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:38:01 ID:ks82nxfgh

釣り

解散


9: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:38:58 ID:lmxbvnc3u

俺みたよ! 結構かわいかったw


10: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:39:56 ID:0vj25zvbeh

顔バレなんて消されるだろ普通に考えて


11: ★しいな★ 2024/08/13(火) 01:42:21 ID:am83hgkva

違う、実際に今もサイトで見てる

確実にURLもあるんだけどなんかうまくいかない


12: 匿名さん 2024/08/13(火) 01:23:03 ID:afjeh16dzl

>>11 更新かけても動画あるの?


13: ★しいな★ 2024/08/13(火) 01:42:21 ID:am83hgkva

>>12 そう思って何回かF5押してるけど普通に見れる

もちろん非公開リンクじゃないよ




 有名なネット掲示板。『朝日みもり生配信の顔ばれが話題に』というタイトルで立てられたスレッドの内容は、全く盛り上がらないまま数十分で投稿が途絶えている。人気急上昇中の顔出し不可のネットアイドルをダシにした”釣り”行為にしてはお粗末すぎる故、実際にスレッド主は何らかのトラブルに見舞われているとも見て取れたが、その真相は曖昧なままやり取りが終了していた。

 カケルはスマートフォンを脇に放ると寝返りをうった。電気は消してあるから、あとはこのまま目を閉じるだけでいい。白背景に黒文字が並んだブルーライトの景色が、頭の中に浮かんでは消えていく―。

 寝る前の日課―「盛り上がっていないネット掲示板のスレッドを眺める行為」は、しっかりとカケルの脳を覚醒させていた。それでもやめられないのは、単なるネット中毒というよりも、他人に対する好奇心をインターネットを通して発散したいというカケル自身の妙な”性癖”に依存している。

 脳内の映像がカオスな夢として圧縮されてきた寝入り端、カケルのスマートフォンが短く鳴動した。筆不精なカケルでも、からの連絡は見逃さない。

 時刻は朝の4時。休日はほぼ昼まで寝ているカケルの生活を全く無視し、いつでもは連絡を寄越してくる。


<今日の14時に新宿アスタ前来れる?>


 SNSの背景の青空に浮かぶ能天気な文面。何故こんな早朝から起きているのか分からないが、幼馴染のミチは突発的にあれこれ理由をつけてはカケルのことを外に連れ出そうとする。


《無理

 あつい》


 淡白な返信。その温度感を全く汲み取らないメッセージが間髪入れずに浮かび上がってくる。


<買い物付き合って!>


 ◇ ◇ ◇


 スマートフォンに表示されている時刻は14時17分。カケルは新宿駅前のファッションビルの前で待ちぼうけを食らっていた。

 ミチの遅刻癖は小学生の時から一向に治らず、いつもカケルが時間より早く待ち合わせ場所に到着しては待たされている。それなら待ち合わせ時刻より遅く到着しても損はないのだが、カケルの几帳面な性格がそれを許さなかった。自分が時間に間に合っていなかったら、ミチを叱る権利はない。


《あついんだけど

 早くして》


 SNSで文字を送ると、その隣にほんの数秒で既読マークが付く。ということは、今は歩行中ではない可能性が高い。つまり、電車に乗っているのか―。せめて駅にでも着いていてくれればいいが、もしかするとあと10分はかかるかもしれない。


《中うろついてるわ》


 続けて一言だけ打つと、カケルはビルの中に入った。

 汗ばんで火照った身体にキンキンと冷気が突き刺さる。普段から部屋に籠りがちなカケルにとっては心地良いものだった。

 ビルの中にはカケルが興味を持てるものが少なかった。時間を潰さないといけないとはいえ、流行のファッションやアクセサリーやプチプラは最早、カケルにとっては異世界の文化に近い。ファッショニスタな高校生であるミチは、今回に限らず、カケルを荷物持ちとしてしょっちゅう買い物に連れ回している。月に一度、アルバイトで貯めたお金をまとめて服飾につぎ込むミチの浪費癖を、カケルは未だに理解出来なかった。

 ぼんやりと歩くカケルの脳が覚醒したのは、エスカレーターに足を乗せた時だった。


「そういや、朝日みもりヤバかったよな」

「ね! でも結構可愛かったらしい。あたし見てないけど」


 目の前のカップルの会話が耳に入る。この内容はまさしく、今朝方に眺めていたスレッドの内容だと確信した。

「なんかさ、あんま話題になってないけど見た人は見たって言うじゃん。なのに証拠何も残ってないの怖いよね」

「都市伝説生まれる瞬間に立ち会っちゃったんじゃね? ヤバすぎ」

 カケルは心の中でにやついた。こういうことがあるから過疎スレ巡りはやめられない。そのほとんどは内容もオチも何も無い形で幕引きとなるが、今回の朝日みもりのように”何か”があるパターンにあたるとカケルの心は踊った。

 流されるかもしれないが、どうせならミチにもこの話題を共有したい。そう思った矢先、ズボンのポケットに入れたスマートフォンが短く鳴動した。


<入口着いた!どっか行ってる感じ?>


 相変わらずまともにメッセージを読まない親友の悪癖に溜息を吐きつつ、カケルはエスカレーターを降りると、ぐるりと反対側へ向かった。

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