全力逃走

「世界の御柱たる四人の巫女を探し取るんじゃが何か知らんかえ?」


夏だというのに黒いセーラー服を来た彼女の口から出たのは

そんな突拍子もないセリフだった。

影宮と少女の間にしばしの静寂が流れる

何をいっているんだろう、この人は・・・・

影宮はいきなり訳の分からないことを言い始めた

黒セーラーの少女に困惑した顔を向けることしかできなかった。

あれ、本当に何この状況・・・・え?これ私幻覚見てる?

夏の暑さで幻覚でも見ているのだろうか?

しかし、頭から首筋を伝う水の冷たさが影宮に

否が応でもこれが現実だということを突き付けてくる。


「あー、もしかして暑さで頭が回っておらぬのかのう?」


影宮が困惑気味に現実逃避をしている中黒セーラーの少女は

影宮の前で考え込むようなしぐさを数秒ほど行った後何かを

思いついたようにポンと手を叩く

「そうじゃ!私が家まで送ってしんぜよう!」

「結構です!」

即答である

「む、何故じゃ?」

いきなり世界の御柱たる四人の巫女なんて頭のおかしい事を言う人に

家に、ましてや住所を教えるような真似なんて出来るわけ無いでしょうが!!

等とは口が裂けても言えないので影宮は口をつぐみどうすれば

一刻も早くこの場を離れられるのかという考えに施行を巡らせるが

一向にいい考えは思いつかない。

そんな時だった

「見つけましたよ!!」

そんな声が公園の入口の方から響き渡る

影宮がそちらに視線を向けるとそこには明らかに不機嫌そうな顔をした

一人の女性が立っていた。

その視線は明らかに黒セーラーの少女へと向けられており

対する黒セーラーの少女は自身の悪事がばれた子供のように焦りを

顔に浮かべている。

それを見つつ影宮は女性の方を一瞥すると

女性の方は影宮の事を不思議そうに眺めているが

興味の方は黒セーラーの少女に注がれているようだった。

今しかない!!

そう決断すると同時に影宮は公園の入口へと走り出す

背後から黒セーラーのしまったという声が聞こえてくるが

影宮は女性の横をすり抜けるとそのまま脇目もふらずに

家へと駆けだすのだった。




自身の脇を抜け一直線に走り去った少女の方を少しの間眺めすぐに自身の同僚へと

視線を戻す。

視界に映るのは先ほどまで話していた少女に逃げられ泣きそうな顔をしている

同僚がそこにいた。

その光景を見て彼女、凪咲ナギサは呆れた顔でため息をはく。

「現界人と話すのはいいですけど、私たちがここに来た目的を覚えてます?」

そう問いかけを投げた凪咲に先ほどまで影宮の事を心配していた少女

悪食アクジキは影宮が走り去った方を見ながら


「言われんでもわかっとるよ、早急にこの世界を維持しとる御柱の巫女を

保護せねばなるまい、だからこそ現界人に話を聞いておったのじゃ」

同じ方向をにらみつつ悪食は拳を握りしめる。

そんな悪食の様子を眺めつつ凪咲は再び影宮の去った方を一瞥する。

「やけにさっきの現界人に興味津々ですね?何か気になる事でも?」

思いついた疑問をそのまま凪咲が口に出すと悪食は

にやりと口元に笑みを浮かべた。

「あの娘からは匂いがした」

「そりゃあ、匂うでしょう夏真っ盛りって感じみたいですし汗の匂いとか」

「ちがうっ!!確かに汗のにおいもしたがそr」

「同性でもセクハラって適用されるの知ってますか?」

「ええいくだらない茶々を入れてわしの話を遮るな!!」

茶々を入れてくる凪咲に悪食は噛みつくような勢いで怒りつつゆっくりと

深呼吸をしてから話を続ける。


「良いか?あの娘からは季節の匂いがしたのじゃ」

「匂いと言いますと?」

「そう、あれはわしがおぬしとはぐれたときじゃった・・・」

「長くなりそうなんで別の場所行きません?」

セミの声が響き夏特有の暑さが照り付ける公園で一人の少女は

暑さを気にする事無く自身の見解を述べ始めその同僚たる女性の顔は

全てを諦めたような表情をしているのだった。



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世界の崩壊を食い止めるため 天川悠里 @amakawayouri

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