第6話 生産の件

 竜が目を点にしてビックリした顔をするのは見ものだったよ!


『アンレまっ!! 僕の言葉が分かるの、君? 君は誰だい?』


「僕はカナタ·イーアサーク。この辺境の地を治める貴族の次男です」


『おお! 初めてだーっ!! 僕の言葉を理解してくれる人はっ!! やっと、色々と説明出来るーっ!!』


 僕と会話してるのを見て危険が無いと判断したのか父上とセバスさんも僕を庇う体勢をやめて僕の後ろに一歩下がった。


「カナタよ、竜は何と言っているのだ?」 


「はい、父上。竜さんは初めて自分の言葉を理解する人に出会えたと言って喜んでくれてます。それで、自分の創造した物をちゃんと説明できると言ってますね」


 僕の言葉に父上が考え込む。


「フム…… 猛虎教が言うような破滅を呼ぶ竜とは思えぬな……」


「きっと違うと思いますよ」


 気づけば母上、兄上、姉上、カナデちゃんにメリーさんにトマスさんまで近くまで来ていたよ。


「竜さん、大きいね〜」


 カナデちゃんが破滅竜を見て感心してるよ。本当に可愛いな。


『うわ〜、いっぱい来てくれた! それじゃね、先ずはコレ! コレはねぇ、守護の御守りなんだ。僕が作ったんだよ! 物理攻撃の八割を吸収するスグレモノなんだよ! 原材料は僕の生え変わった鱗だからそんなに簡単には壊れないんだよ!』


 おおーっ、これは凄いね。ちゃんとネックレス型、ブレスレット型と二通りあるから男性にも女性にも対応出きる。


 んっ!? っと、そう言えば自分の鱗って言ってたよね。


「鱗って生え変わったりするのですか?」


『うん、僕の鱗は一年に百枚、生え変わるんだよ。それと牙は一年に十本で、爪は一年に四十本だね。それらを素材にして色々な物を創るのが僕の趣味なんだぁ。でも創るばっかりで溜まる一方だったから、誰かにプレゼントしようと思って五百年前からこうして活動してるんだけど、誰も僕の言うことを理解してくれなくてね…… でも今日はカナタに出会えた。これからカナタに通訳して貰えば僕の創った物をプレゼント出来るよ!!』


 僕は破滅を呼ぶと言われる竜は破滅じゃなくて生産を楽しむ竜だという事に気づいたんだ。なのでその事を父上に告げる事に。


「父上、竜さんは破滅を望むのではなく、自らが創った物を誰かにプレゼントしたいと望んでいるようです。言ってみれば生産の竜ですね」


「ムウ、そうなのか。ならば猛虎教の教えはデタラメだという事になるな。これは陛下にお伝えせねばならぬ事態だが…… 先ずはこの街道より動いて貰えぬか頼んでみてくれ、カナタ。我が家の庭に移動して頂くのが良いのだが」


 父上にそう言われたので僕は竜との会話を続けた。 


「竜さん、良かったらお名前を教えてくれませんか? それと、ここは人が行き来する街道になりますから、良かったら家に来てください」


『えっ!? いいの? それならお邪魔しようかな。この姿でもかなり小さい姿に変化してるけど、確かに人にとってはまだ大きいよね。それじゃ…… ちょっと待ってね。もう少し小さく変化するから……』


 そう言うと竜さんは魔力をその身にまといそして、


「ふわ〜、竜さん、小さくなったーっ!?」


 カナデちゃんが驚いてる。というか僕も驚いてしまった。竜さんは柴犬の成犬ぐらいのサイズになったからだ。


『これなら馬車に僕も乗れるでしょ。馬が怖がらなければだけどね』


 うちの馬たちはよく訓練されていて、主たちと一緒にいる者は自分たちを攻撃しないと理解するから多分だけど大丈夫だと竜さんに伝える。


 そして、その通りに馬たちは怯えもしないで竜さんが近づくのを許した。なのでみんなで馬車に乗って我が家へと戻ったんだ。


 小さいサイズになってくれたのでそのまま屋敷の応接間に来てもらい話の続きをする事になったよ。


『これがね、さっきも見せた物理守護の御守りで、こっちが魔法守護の御守り。魔法も同じで八割は防いでくれるよ。それからこれが僕の牙を利用して創ったナイフだよ。解体用にと思って創ったんだぁ。それと、爪を利用して創った弓。魔法弓だから自分の魔力を引いて飛ばせるよ。矢がいらないから便利だとおもうんだ。それと、これが……』


「ちょっ、ちょっと待ってください、竜さん。いきなりたくさん出されても困るから今はコレぐらいにして欲しいです。それと、お名前を教えて貰えませんか?」


 次々と創った物を出そうとする竜さんにちょっと待ってもらい、先ずは名前を聞いてみる。


『あっ、ゴメンね。僕の言う事を理解してくれるのが嬉しくてつい。僕の名前だったね。僕の名前はハーメッツっていうよ。偉大なる真竜バルハレートの末子なんだ。父上は今はもう天界に昇られたけどね。僕もまだ三万年と少ししか生きてない若竜だから、父上の元に向かうのはまだまだ先なんだよ』


 うん、ハーメッツさんがとても長生きされてるのが良く分かったよ。


「そうなんですね、それじゃハーメッツさんとこれからお呼びしますね」


『え〜、そんな堅苦しいのはヤダな〜。カナタも他のみんなも気軽にハーちゃんって呼んでよ』


 僕がそのハーちゃんの言葉をみんなに伝えるとカナデちゃんは早速、


「えへへ〜、小さいハーちゃんは可愛いねぇ」


 なんて言いながらハーちゃんの頭を撫で撫でしている。

 それを見た姉上も負けじと、


「カナちゃん、私も撫で撫でしたい!」


 と言ってハーちゃんを撫で回している。何故か母上の手もワキワキと動いてるのですが…… 大人なんですから、自重してくださいね、母上。


「うむ、私はハー殿と呼ばせていただこう」

「僕も父上と同じくハー殿と呼ばせていただきます」


『カナタの男性身内は堅苦しいんだね』


 いやまあうちの父上も一応お貴族様だし、兄上はその嫡男なので許して上げてね、ハーちゃん。


 それから、一旦ハーちゃんが出してくれた生産物は仕舞ってもらって、父上、兄上、セバスさん、それと通訳の僕を交えて、ハーちゃんがこれからどうしたいのかを話し合う事になったんだ。


『言葉が分かるカナタがいるから出来ればここに居させて欲しいかな。構わない?』


「勿論うちとしても歓迎するが、国王陛下にはお知らせしたいのだ。それは構わないだろうか?」


『うん、僕は別に良いよ。でも国王が僕に会いたいって言ったらカナタに一緒について来て貰う事になるかなぁ』


 それもそうだね…… でも僕は権謀術数渦巻く王宮には行きたくないなぁ……


「なに、その時は陛下にコチラに来ていただくよ。ハー殿の望みだと言えば陛下も無理は言われないだろう」


 という訳で取り敢えずハーちゃんはうちに住んで貰う事になったんだ。

 ハーちゃんは食事の必要は無いんだって。周囲に漂う魔力素を吸収するから大丈夫らしい。

 一万年前までは魔獣を狩って食べてたらしいけどね。真竜の子は産まれて三万年を過ぎたら食事の必要が無くなるんだって。


 父上は国王陛下へとお知らせする為に手紙を作成。兄上はその際の注意事項なんかを学ぶ為に父上と一緒に執務室に向かった。


 で、僕はというと……


『それでね、カナタ。コレが初期作品なんだよ。できがイマイチでね。でもコレも千個は作ってるからどうしたら良いかな? あ、他にもあるんだ、次はコレなんだけど……』


 ハーちゃんが次々と出す生産物の説明を延々と聞かされる役目を仰せつかりました……


 ハーちゃん、そんなに沢山の物を僕の頭脳では覚えられません……


 

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前世で叶わなかった夢が叶った件(破滅竜と呼ばれる竜は生産竜だった) しょうわな人 @Chou03

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