第3話

8月16日、夜が明ける前の静寂の中、俺は夢から目覚めた。夢の中で、かつての英雄たちが登場し、彼らの物語が繰り広げられていた。彼らはかつて自分が憧れていた存在であり、無敵の力と勇気を持っていた。しかし、今ではその姿はまるで空蝉のように、かつての栄光が抜け殻として残っているだけだと感じた。夢の余韻に浸りながら、英雄とは何かを改めて考えさせられた。


朝食を済ませた後、近くの山に登ることにした。道中、木々の間から突然ミミズクが姿を現した。大きな目でこちらをじっと見つめ、羽を静かに動かすその姿は、どこか神秘的で不思議な力を感じさせた。そのミミズクを見ながら、英雄とは、自然や神秘と深く結びついた存在なのかもしれないとふと思った。


山を下りる途中、旧友の家に立ち寄った。彼とは久しぶりに会うので、話が弾んだ。途中で彼が冗談を交えつつ、クロロホルムについての話題を持ち出した。彼がかつていた仕事の中で、この薬品を使った話を聞いたが、それは犯罪や悪事とは関係ないという。彼は「クロロホルムのように、社会も少しずつ眠らせて、静かに変化を迎える時があるんだよ」と言った。それを聞いて、社会進化について思いを巡らせた。時にはゆっくりと、しかし確実に変わっていく社会の中で、どうやって自分が生き残り、進化していくべきかを考えさせられた。


夕方、家に戻り、ふと鏡に映った自分の顔を見た。年齢を重ねた顔には、これまでの経験や苦労が刻み込まれているように感じた。だが、その顔にはまだ戦う意思が残っていた。鏡の中の自分を見つめながら、英雄とは必ずしも歴史に名を残す存在だけではない。日々の生活の中で、自分の役割を果たし、家族や仲間を守ることもまた、立派な英雄の姿であると感じた。


夜になり、武者の姿が夢の中に再び現れた。彼らは歴史に名を残した英雄たちではあったが、その背後には数えきれないほどの無名の者たちがいた。その無名の者たちこそが、社会進化を支え、次の世代にバトンを渡していく存在であることに気付かされた。


俺は眠りにつく前に、今日一日を振り返った。ミミズクとの出会い、クロロホルムの話、そして鏡に映った自分の顔。全てが繋がり、英雄とは何か、そして自分がどう生きるべきかを改めて問いかけてきたように感じた。

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妄想のお盆 鷹山トシキ @1982

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